【豊田剛一郎】患者を救う医師から、医療を救う医師になる

2020/3/30
医療テックベンチャー・メドレーの代表取締役医師――そんなめずらしい肩書を持つ豊田剛一郎氏。前職はマッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタント、それ以前は日米の医療現場を経験した脳神経外科医と、異色のキャリアを歩んできた。しかしその根底には、「医療の未来のために働く」という一貫した思いがあったという。

「医療ヘルスケアの未来をつくる」をビジョンに掲げ、医療のさまざまな課題解決に取り組むメドレーに至る道のりをたどりながら、豊田氏を突き動かしてきた志や哲学を聞いた。(全7回)

「とにかく手を尽くしてください」

医療の目的とは何だろう。医療の現場で働くうちに、そう考えるようになりました。
脳外科では、命に関わる治療の選択を迫られることが多々あります。もちろん、それを決めるのは医師ではなく、患者さんご自身か、患者さんに意識がなければそのご家族です。
例えば、あなたのご両親や祖父母が急に倒れて、意識を失ったとします。病院に救急搬送され、検査の結果、脳出血と判明。駆けつけたあなたやご家族は、医師から病状や治療についての説明を受けることになります。
「手術をしないと危険な状態です。このまま出血が続けば、明日までもつかどうかわかりません。手術をすれば、おそらく命は助かります」
「ただ、手術が成功したとしても、意識が戻る可能性は低く、植物状態や寝たきりになってしまうか、重い後遺症が残ってしまうリスクが高いです」
医師からこう説明されたとき、あなたならどう答えるでしょうか。