【尾崎容子】多死社会日本、訪問診療医が実践する理想の看取り

2020/3/8
高齢化社会日本。2025年には年間150万人以上が死亡し、ピークとなる2040年には168万人が死亡すると予測される。介護や看取りは他人事ではない。そして、自分自身もいつかは迎える「死」。

もう積極的治療は難しく余命を考えるようになった時、あなたはどこで最期の時間を過ごしたいだろうか。

訪問診療医の尾崎容子氏は、人生の終末期を自宅や施設で過ごす人を支え、多くの人を看取ってきた。最期までその人らしく過ごせるように寄り添い、支える家族や周囲の人に「看取り勉強会」を開く。

「知らないことで不安になる。身体の弱りや死について、きちんと知識を持つことで不安は減ります」と語る尾崎氏の看取りのあり方とは。(全7回)
尾崎容子(おざき・ようこ)/訪問診療医、おかやま在宅クリニック院長
医学博士。大阪府に生まれ、京都府立医科大学を卒業。京都府立医科大学麻酔科学教室、集中治療室、西陣病院麻酔科勤務を経て、2013年、千春会病院在宅医療部に勤務。15年京都市中京区に在宅療養支援診療所「おかやま在宅クリニック」を開業。著書に『それでも病院で死にますか』(セブン&アイ出版)。

わからないから怖い

がんなどの病気を抱えた高齢者や、病気の末期にある方に、「覚悟してください」とよく医療ドラマでは医師が言いますよね。
でも、私は「覚悟は別にいいです」と言っています。覚悟が必要なのは、医療者です。患者さんやご家族に必要なのは、知識です。
これから何が起こるかわからないから怖い。どうなるかわからないから自宅で看取るのも不安だと思うのです。
死は誰しも訪れるものですが、経験して戻ってきた人はあまりいないですよね。未知の体験だから怖い。
「私もこればっかりは経験したことないからわからんけどね」とよく患者さんとも笑い話をします。
でも、これから死に向けて体がどのように弱っていくか、どんな症状があるのか生理的な変化やその時に起こる一般的な感情などについて知っていれば、ひどく怖がらなくていいのです。