[ニューヨーク 18日 ロイター] - 米大統領選の民主党候補指名を争うブルームバーグ前ニューヨーク市長は18日、金融取引税の導入や消費者保護の強化など盛った包括的な金融サービス政策案を発表した。

米投資銀行出身で、金融情報サービス事業で富を築いた同氏としては、大きな方向転換となる。

ブルームバーグ陣営は「世界的に成功した金融技術会社の創業者として、ブルームバーグ氏はシステムをよく理解しており、すべての米国民にとってより良いシステムにするための比類ない資質を備えている」と訴えた。

一連の提案の中で最も目を引くのは、株式、債券、先物契約の決済に対する0.1%の取引税導入や、銀行の自己勘定取引を規制する「ボルカールール」の強化、金融取引の速度規制だ。

ブルームバーグ氏はこのほか、トランプ政権下で後退した消費者保護を強化するため、銀行の自己資本比率引き上げや健全性審査の厳格化などを提案。

金融危機の際に公的資金で救済された連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の統合も提案した。

さらに、国民の銀行サービスへのアクセス改善や、司法省内に「企業犯罪」を担当するチームを新設する案を提示した。

ブルームバーグ氏は、19日に開催される民主党候補者のテレビ討論会に初めて参加する。

コンパス・ポイント・リサーチ&トレーディングの政策リサーチ責任者アイザック・ボルタンスキー氏は、今回発表された政策案について「ブルームバーグ氏が討論会に初めて参加することを踏まえると、進歩派の批判を弱めることが主な狙いではないか」と指摘した。

そのうえで「提案の全体的なトーンからは、民主党におけるポピュリストへの傾斜や大幅な政策シフトの可能性がうかがわれる」とした。

ブルームバーグ氏の提案には、特に取引税を巡って金融業界団体から強い反発が出そうだ。

米証券業金融市場協会(SIMFA)のケン・ベンツェン最高経営責任者(CEO)は取引税について、中間層の預金者や退職者の痛手になると指摘。「市場の発展や効率化、競争などで投資コストがゼロに向かいつつある中で、事実上の売上税を課してコストを引き上げるのは理にかなわない」と批判した。

一方で、一部のアナリストはブルームバーグ氏が大統領選で勝利した場合に金融業界へのリスクとなる可能性は低いと指摘。コーエン・ワシントン・リサーチ・グループのアナリスト、ジャレト・シーバーグ氏はリポートで「民主党候補は勝つために大手行に焦点を当てた案が必要だ」としたうえで「ブルームバーグ氏は市場を理解しており、経済に悪影響をもたらす政策を推し進める可能性は低い」との見方を示した。