(ブルームバーグ): キリンホールディングス(HD)は14日、株主の英投資会社フランチャイズ・パートナーズ(FP)が出した6000円規模の自社株買いなどの株主提案に対し反対する意向を表明した。

同社の発表によると、FPは3月27日に開催予定の定時株主総会で、6000億円規模の自社株買いや、FPが推薦する社外取締役の選任、役員報酬のインセンティブ拡大などを求めている。

キリンHDの発表資料によると、自社株取得についてFP側は、昨年のキリンHDによる協和発酵バイオの買収やファンケルの33%の株式取得は市場で評価されておらず、キリンHDの企業価値は各事業の価値の合計から50%以上も過小に評価されていると指摘。バイオケミカルやスキンケアなど非中核事業の株式を売却して自己株を取得し、ビール事業に注力することを求めている。

キリンHDはバイオ技術をベースに酒類や飲料事業などの領域と医領域を強化して資本効率の改善を進めているほか、ファンケルとは資本業務提携の関係を通じてシナジー効果を生み出すための取り組みを展開し、企業価値の向上に努めていると反論。18年と19年にはそれぞれ1000億円規模の自己株式の取得を発表しており株主還元の施策も講じていると訴えた。

社外取締役も提案

事業多角化の取り組みが市場に評価されておらず、社外取締役4人による経営監視は十分ではないとし、FPは半導体試験装置の製造などを手掛けるアドバンテストのニコラス・ベネシュ取締役と、英製薬会社グラクソ・スミスクライン日本法人の社長を務めた菊池加奈子氏の社外取締役選任も求めた。

これに対しキリンHDは、同株主総会に向けて新たな社外取締役候補者4人の選任を提案する計画で、現任の4人のうち1人が退任することから同社の社外取締役は計7人と社外比率は58%に上昇する方針を示した。社内と社外合わせて12名という新取締役体制案は企業規模に照らし合わせて適切だとし、提案された2人を選任する必要はないと強調した。

取締役の報酬額について、現在同社は金銭によるものが年9億5000万円以内、株式が同2億5000万円以内としている。FPは金銭部分を6億円に減らす一方で、株式部分を12億円に引き上げることも提案した。これに対し、キリンHDは反対を表明したものの、金銭部分を維持した上で株式部分を6億円に引き上げる案を示す考えを明らかにした。

FPの提案については日経ビジネスが14日午後に最初に報道。この報道を受けてキリンHD株は一時前日比3.6%高の2591円と、昨年4月以来10カ月ぶりの日中高値水準まで上昇した。

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