【名著に学ぶ】どうすれば、人を「動かせる」のか

2020/2/15
本の要約サイト「フライヤー」とコラボし、毎週土曜日に話題のビジネス本の要約をお届けする「10分読書」。短時間で本の中身を学ぶことができ、現代のビジネスパーソンにぴったりの内容になっている。
ぜひ、週末のひとときで新たな知識を手に入れてほしい。
どんな人も、非難されても自分の非を認めようとはしないものだ。
アメリカ犯罪史に残る、「二丁ピストルのクローレー」という凶悪犯がいる。
彼は、ほんの些細なきっかけからでも、簡単にピストルを撃ちまくり、人を殺した。しかし、彼がしたためた手紙には、彼自身のことがこう語られていたという。
「私の心。それは、疲れ果てた心ではあるが、優しい心である。誰ひとり、人を傷つけようとは思わぬ心である」
自分の行為は正しいと考えている犯罪者は、珍しくないそうである。
極悪人たちがそうだとしたら、一般の人間が自分のことをどう思っているかは、想像に難くない。
どんなときも、自分のことを正当化するのが人間というものなのだ。
すると、他人を批判したり、非難したりすることは、実に無益で、相手を怒らせるだけのことだと分かるだろう。人は他人の批判を恐れ、称賛こそを強く望んでいる。
ある工場では、ヘルメットの着用を義務づけることにし、工場長はそうしない職員を厳しくとがめた。
すると相手は不満そうにして、見られていないところではヘルメットを脱いでしまった。
そこで、工場長はやり方を変えた。
「ヘルメットは確かに快適ではない」と何気なく切り出し、「でも危険が防げるのだから被ろう」と穏やかに話すと、相手は怒らずにヘルメットを着用するようになったという。
(写真:Rattankun Thongbun/iStock)
リンカーンは若い頃、ある政治家を風刺する文章を新聞に寄稿したところ、プライドの高い政治家は激怒し、リンカーンに決闘を申し込んだ。
いよいよ果たし合いというところで介添人が割り込み、事なきを得たが、リンカーンは人の扱い方について教訓を得た。
その後、どんなことがあっても、人を馬鹿にせず、人を非難しなくなったという。
南北戦争の折、彼の指揮下にあったミード将軍が、ここぞという場面で命令に従わず、ポトマック河地区での戦闘の勝機を逃してしまった。落胆し、腹を立て、リンカーンはミード将軍へ手紙を書いた。
しかし、その手紙は、死後にリンカーンの書類の間から発見された。つまり、リンカーンは投函しなかったのである。
人を非難するよりも、その人がなぜそういうことをしたのか、考えてみるほうがよいのではないだろうか。
「神様でさえ、人を裁くには、その人の死後までお待ちになる」とは、英国の文学者ドクター・ジョンソンの言葉である。

なかなか満たされない「欲求」とは