【開催延期】新・科学技術立国へ。日本はDeep Tech Islandになれるか

2020/2/14
 3月9日に開催を予定しておりました本イベントは、コロナウイルスの感染予防の観点から、延期とさせて頂きます

 新規のお申し込みを中止し、すでにお申し込みを頂いている方々には、別途お知らせのメールをお送り致します。

 楽しみにしてくださった方々には大変申し訳ございませんが、何卒ご了承ください。なお、延期時期や再開予定については、確定次第NewsPicks上で告知致します。
【記事末の応募フォームより参加受付中】
 GAFAやBATの台頭に象徴されるように、世界各地で勃興した破壊的イノベーションによる産業構造の変革のなかで、過去20年間、日本はその後塵を拝してきた。

 かつてハイテク産業や材料分野で多くの革新的技術を生み出し、「科学技術立国」として世界をリードしていた日本は、もはや過去のものなのか?

 多様性にまさる諸外国に対して、日本の独自性をどう生かすか。新たな可能性として注目されるのが、SDGsに象徴される世界的課題を解決するイノベーションの創出、すなわち「Deep Tech」だ。

 島国特有のアドバンテージを活かし、独創的な研究開発による“知の成果”をテクノロジーとして社会に実装する、産官学民のエコシステムが求められている。

 沖縄を舞台に先進的なDeep Techエコシステムの構築に挑戦している沖縄科学技術大学院大学(OIST)へ、新たにアントレプレナー・イン・レジデンスとして参画した仲津正朗氏に話を聞いた。
ハイトラスト・ファンディングが必要だ
仲津 いまの日本は、イノベーションの“芽”となる研究開発と、その成果をビジネスにして社会に実装するための支援環境、産官学民の連携、法整備などあらゆる面で、アメリカや中国に大きく差を付けられています。
 第一に、大学発ベンチャーの数は増えてきているものの、野心的な研究開発やスタートアップに対するリスクマネーの供給がまだまだ圧倒的に足りていない。供給量もそうですが、実はマネーの質の問題でもあります。
 例えば、スタンフォード大学やUCバークレーを中核としてエコシステムが構成されているシリコンバレーでは、リターン狙いよりもソーシャルインパクトを重視した「スマートマネー」が独立系VCに集まり、まだ海の物とも山の物ともつかない大学発ベンチャーが100億円規模の資金調達するような事例がいくらでもあります。
 一方で、日本のスタートアップ投資はアーリーステージからコーポレートマネーや金融系の資本が入ってくるケースが多く、どうしても堅実で短期的な成果が重視される。これがあらゆる点でブレーキになってしまう。
 大学や企業の研究開発においても同様です。価値を生み出すまでに長い時間のかかる基礎研究や、どんな価値が生まれるかわからないユニークな研究が切り捨てられる傾向にあり、独創的なテクノロジーを生み出す土壌が失われてしまっている。
 この状況を打破するうえで、キーワードになるのが「ハイトラスト・ファンディング」です。
 簡単に言えば、研究者の創造性を信頼して研究の自由度を与える仕組みのことですが、こうした支援がなければ、本当に社会的インパクトのある研究成果や、イノベーティブな技術を生み出すことはできません。
 それと対になるのが、テクノロジーの将来的価値を見抜き、社会実装のプロデュースができる人材の必要性です。
 アカデミーとビジネスのブリッジ役ができる仲介者、いわばイノベーションの目利きである「フューチャリスト」の存在が極めて重要になります。
 米国では大学発ベンチャーの活性化のため、博士号を持つ科学者が「科学行政官」としてスタートアップの技術を目利きし、選抜されたシードに政府資金を投入してプロデュースしています。
 そこからスター起業家が次々と生まれ、イノベーションを牽引している。こういった制度も日本ではまだ上手く機能していない。
 日本が科学技術立国として再興するためには、テクノロジーの目利きができるフューチャリストを育成し、研究者の創造性を信じてリスクマネーを投資する。
 そうして生まれたテクノロジーをビジネスに展開し、社会にインパクトを与えていく。このエコシステムを創出することが何より求められています。
なぜDeep Techに可能性があるのか
 シリコンバレーというのはITの世界で、新規テクノロジーの研究成果が大体2~3年で事業化できます。中国もインドも同じようにIT領域で、かつ膨大な人口をバックにした“規模の経済”を生かしたスケールを得意としている。
 この領域で日本が真正面からぶつかって、勝ち抜いていくことはもはや難しいでしょう。われわれは新たなホワイトスペースを見つける必要性に迫られています。
 そこで「Deep Tech」です。科学的発見を礎とするDeep Techは、基礎研究に高度なスキル、そして多くの資金と時間を要しますが、だからこそ先行者として勝てるチャンスが残されている。
 ターゲットとなるのは、国連のSDGsに象徴される“ディープイシュー”です。研究開発の成果を生かして、世界の根源的課題を解決するイノベーションを目指す方向であれば、日本という島国で、人口が多くなくても追求できる可能性があります。
 これからの21世紀、22世紀の社会において、従来型の経済成長を追い求めいく方向性は、必ず行き詰まるでしょう。大きなパラダイムシフトをせざるを得ないと思っています。
 すでに世界の論点は、今のGDP型の経済システムはもう流石に続けられない、新しい生産指標を確立して、それに適応するような経済システムに作り替えていかないと社会も地球も持たないと、そういう議論に変わってきてます。
 いかに持続的な経済システムを作っていくか。具体的には、どれだけ経済戦争が起きないとか、格差が起きないとか、幸福度を高めるかといった、規模ではなく質を高める経済成長です。そこにアプローチするのが、まさにDeep Techです。
 このDeep Tech領域で諸外国に先行して、スタートアップのエコシステムに落とし込むことができれば、それが日本再興のために残されたラストリゾートになると考えています。
沖縄という地理的アドバンテージ
 私はOISTを中核とした沖縄というフィールドに、日本の新たな方向性を示すロールモデルを構築できる可能性を感じています。
 歴史上、多くの組織や国家が盛衰していくなかで、往々にして本流から遠く離れた場所から新しい“うねり”が起き、それが新しいインフラを生み出していくということが繰り返されてきました。
沖縄県中部にあるOISTのキャンパス
 シリコンバレーも明治維新も同じことです。中央から離れたエリアで、独立心をもった人々が突然変異的なカルチャーを形成し、死に物狂いで頑張ることで新しい本流を生み出していったわけじゃないですか。
 現代の日本において、沖縄は中央から遠く離れており、生活コストは安く、若者にエネルギーと時間がある。そこにOISTという世界トップクラスの“知の拠点”が生まれた。これは40年前のシリコンバレーの原風景に極めて近い環境です。
 僕は、ここに多様性とリスクをMAXレベルまで高めた、イノベーション創出の「サンドボックス」を作りたいと考えています。
 具体的には、戦略特区のような形で新しいマーケットを作り、スタートアップやテクノロジーに対する投資を圧倒的に優遇する。そこに世界中から科学者や研究者、そして起業家を招聘することで、新たなエコシステムを構築したい。
 これが確立できたら、「福岡市に実装したらどうなるか」「京都に実装したらどうなるか」とノウハウを吸収してもらって、ロールモデルとして本土に展開していく。これが沖縄を中核とした「Deep Tech Island構想」です。
 荒唐無稽に聞こえるかもしれませんが、OISTがたった10年間で日本トップの研究機関に成長できた理由は、たぶん「成功する」と誰も思っていなかったからです。沖縄の田舎の、何もない山のなかに大学ができることも、全世界から優秀な科学者が集まってくることも、誰も想像もつかなかった。
 でも、それを信じて任せた人たちがいたからこそ、今があります。
 シリコンバレーも同じです。「変わった奴らが変なことを始めたけど、やらせてみよう」というのが20~30年も続けば、沖縄は日本の“生き筋”を示すロールモデルになります。
(取材・構成:呉琢磨 デザイン:月森恭助)