【解説】韓国「パラサイト」、世界初アカデミー受賞の真相

2020/2/11
韓国映画『パラサイト』がアカデミー賞の最高賞である作品賞を受賞。韓国映画としてはもちろん、非英語の作品が最高賞を獲得したのは、アカデミー賞史上初の快挙だ。
なぜ、快挙なのか。
1929年の創設以来、91の作品にアカデミー賞の最高賞である作品賞が贈られてきたが、これまでは、サイレント映画1作品を除き、全てが英語作品だった。撮影地も中国やインドで一部が行われた例外を除けば、全て欧米だ。
それに対して、「パラサイト」は出演する俳優は全員韓国人で韓国語で演じ、撮影も韓国で行われた。これまでならば、こうした外国語の作品は「外国語映画賞」(今回から国際長編映画賞に改称)という枠でノミネート、表彰されることが定番だった。
アカデミー作品賞を受賞した「パラサイト」のポン・ジュノ監督と女優パク・ソダム(左)らの出演者・関係者(Photo by Matt Petit - Handout/A.M.P.A.S. via Getty Images)
最高賞の作品賞にノミネートされるためには、①ロサンゼルス郡内の映画館で連続7日以上にわたって有料で公開され、②米国上映の前にテレビやネットなどで公開されていない、という条件がある。
非英語作品を米国で一定期間上映することは大きなハードルであるし、本国で人気が出ればテレビ上映されることも多い。国際長編映画賞にはその必要がないため、非英語映画の秀作は多くはこのカテゴリーで賞を争うことになるのだ。
さらに、アメリカの映画芸術科学アカデミーにノミネートされなければならない。字幕上映となる非英語映画は、英語話者で構成されるアカデミー会員への訴求力という点でも、どうしても不利になりやすい。
そもそも、ポン・ジュノ監督自身が、当初は「韓国的なディテールが多く描かれているので、私も最初は外国の方に理解していただくことが難しいのではないか」と日本のメディアに語っていた。
しかし、監督の懸念をよそに、『パラサイト』は世界を席巻していく。