ちょっと気になる企業倒産の動き。白元の倒産から景気回復や銀行融資スタンスまでを読み解いてみる
2014/06/01, Longine
Longine編集部(以下、Longine):先週を振り返って気になったことがあるそうですね。
笹島勝人(以下、笹島):5月29日に、「白元」という会社が、民事再生法を申請し倒産しました。防虫剤などトイレタリー商品の会社で、私にとっても比較的身近な存在でした。タンスの引き出しを開けると同社の製品を目にしたことや、風邪で熱が出たとき冷却枕の「アイスノン」に世話になったことを思い出しました。既に他社に売却したようですが、国内初の使い捨てカイロ「ホッカイロ」も同社の製品でした。何が気になったかというと、「白元」だけでなく一度は聞いたことがある会社の、倒産ニュースが増えてきた感じがするからです。
Longine:世の中では消費税率引き上げ後も景気は底堅いという報道もあるので、それほど気にする必要はないと言えませんか?
笹島:企業倒産は、本当の不況の時はもちろんですが、「景気回復の入り口でも意外に増える」と、昔から言わるからですね。理由は、売上が上向いたり物価が上昇して、原材料の数量やコストが想定外に増えたりすると、資金繰りが連鎖的に悪化することがあるからです。確かに、従来から起こりえるパターンの倒産が現在起こっているだけで、景気回復が今後も続くのであれば、結果的には一過性ということができます。そうでないとすれば、今後2つのチェックポイントがありそうです。
Longine:1つめは、やはり原材料高や労働者不足でしょうか?
笹島:特に建設業界を注視しています。建設資材の費用だけでなく人件費も、かなり上昇しているようですから。受注した案件の工期中にコストが想定以上に増え、採算悪化だけならまだしも受注済みの工事をこなすほど赤字にならないかどうかです。外食産業も人手不足で大量の店舗閉鎖に追い込まれているようですから、産業界全体の経営課題に「資金繰り」だけでなく「ヒト繰り」が浮上してきました。日本銀行の黒田総裁も、経済成長の下押し圧力として人手不足を気にしているようですね。
Longine:もう1つは? そして銀行への具体的な影響は?
笹島:中小企業金融円滑化法の期限が切れて、1年以上が過ぎました。ほとぼりが冷めてもいい頃合、と思えなくもない。つまり銀行が、経営不振企業を無理に支えることを、やめ始めたかもしれないということです。今後倒産する企業において、過去の信用力に問題があったかどうかがポイントです。業としての信用を失った会社の殆どは、淘汰され消滅か他社に吸収されるか、なければ金融機関の支えで存続しているからです。企業倒産が自然体になると、銀行の利益もそうなるはずです。2014年3月期の3メガバンクの与信費用は引当金の戻りなどで、コストではなく1,738億円の利益でした。これがゼロになるだけで同税引前当期純利益は4%減、低水準だった2013年3月期並み4,006億円の費用になるだけでも、同15%減の計算です。
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コメント
注目のコメント
勉強になる記事。特に、銀行がそろそろ不採算企業を支えなくなってきたという点。中小企業円滑化法で生きながらえてきた企業でも、最近の景気の底打ちにも関わらず好転しなければ、自然に任せるということか。
非常にシャープな問題意識でいらっしゃると思います。
倒産と隠れ倒産は、人繰りから受注を消化できずに発生します。特に建設業界の1次下請け以下などで、ファクタリングニーズが増えています。国も支援制度を設けていますが。また与信面では、今日の日経にありましたが、保証協会からコーポレートでの与信に徐々に移っています。
と、あくまで一般論として。