ケインズ理論「政府は経済に介入すべし」の3つの誤解
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ケインズの、お金を「持つ」という発想が、すべての経済学をひっくり返した。
お金を「使う」という選択肢だけでなく、不確実な状況では「持つ」を判断する人も当然いる。その時、経済活動は止まる。だから政府が、不確実な中でも世の中を豊かにする企業活動を促してあげる必要がある、というのがケインズの考え方。
至極まっとう。
よく、カンフル剤的なインフラ投資を正当化される際、ケインズが悪者にされるが、ケインズも文句があるだろう。
(抜粋)
・「マネーを持つ」ことは当たり前に思えるかもしれませんが、実はそれまでの経済学からは出てこない発想です。需要(買おうとすること)と供給(売ろうとすること)が均衡するという経済学の前提のもとでは、マネーは交換の手段であって、使うものでしかないからです。
・ケインズ自身は、基本的に自由競争は大事だという考えです。お役所が手取り足取り規制すべきだとは考えていませんでした。むしろ、政府は市場の創意工夫を阻害しないやり方を追求しなければならないと繰り返しています。
注目のコメント
「ケインズ=政府の介入」となったのは、1986年にノーベル経済学賞を受賞した公共選択論のJ.M.ブキャナンの影響もかなりある。
ブキャナンは、共著『赤字の民主主義』(邦訳書は日経BP社刊)
https://shop.nikkeibp.co.jp/front/commodity/0000/P50530/
で、ケインズ経済学全盛の1970年代に、不況時の財政赤字を好況時の財政黒字で相殺するというケインズの処方箋を痛烈に批判して、経済学界の内外で有名になった。ケインズは政府の介入以外にも様々な論究があるが、ケインズ政策=赤字財政と印象付けたのは、ブキャナンのケインズ批判によるところが大きい。公共選択論も専攻する私も、この本に影響を受けた。取材中に幾度となく「えーっ!!」と驚きの声を上げてしまいました。
だってケインズ先生ときたら、分かってもらいたくて相手の土俵に乗ったのに、かえって分かりにくくなって誤解されるとは。それでも狙った通りに世の中のモードが変わったけれど、真意が伝わっていないから覆ってしまうなんて・・・いやはや。心残りすぎて、そのへんに幽霊がいそうです(英国だけに)。
前回のアダム・スミスもそうですが、時代状況が変化したなか、古典はそのまま適用できないかもしれません。ただ、問いかけの本質は通じます。「今の常識を疑え」というケインズ先生の叱咤が聞こえてきます。