[奈良市 6日 ロイター] - 日銀の政井貴子審議委員は6日、奈良市で行った記者会見で、新型コロナウイルスの感染拡大による経済への影響を注視し、「必要があれば、必要な対応を取っていく」と述べた。ただ、ITサイクルの好転などで世界経済は回復が見込まれ、政府の経済対策の効果もあって「(日本経済が)潜在成長率を幾分上回る緩やかな成長を維持するという見通しが現時点で大きく変わったとはみていない」と指摘した。

政井委員は、新型肺炎拡大の世界経済や日本経済への影響については「まだ不確実性が高い。経済指標といったハードデータを待ちたい」と述べた。

政井委員は6日午前のあいさつで、金融緩和の長期化による副作用として、年金などの運用利回りの低下が経済活動に及ぼす影響などを挙げた。[nL4N2A60PQ]記者会見では、「超長期ゾーンでの過剰なフラットニングを契機として、年金などの運用利回りが過度に低下することが続くということが、家計・企業のマインドにネガティブな影響を与えるか注視していく必要がある」と述べた。

一方で、低金利の持続で金融機関の貸し出しが伸びなくなり、金融仲介機能が阻害される「リバーサルレート」にはなっていないと指摘した。仲介機能に障害が出る恐れがあれば施策を打ち出す考えはあるものの、「金融機関は現在、十分な資本を有している。仲介機能に問題が起こっているとは考えていない」と述べた。

午前のあいさつで政井委員は、為替相場や国際商品市況の動向が物価のリスク要因だと指摘した。政井委員は会見で、為替や国際商品市況の短期的な変動と中期的な予想インフレ率の関係を注視する方針を示した。その上で「具体的な水準が念頭にあるわけではない」と述べた。

*内容を追加しました。

(和田崇彦 編集:青山敦子)