[オタワ 5日 ロイター] - カナダ銀行(中央銀行)のウィルキンス上級副総裁は5日、中国が発生源となった新型コロナウイルスの感染拡大で、供給網阻害のほか、原油価格下落などの形でカナダ経済も影響を受ける可能性があるとの見方を示した。

ウィルキンス上級副総裁はトロントで行った講演で「このようなウイルス感染拡大は、いつ何時であれ望ましいものではないが、世界経済がやや脆弱で、カナダでは経済指標がまちまちとなっている現在、感染拡大は望まざるタイミングで発生した」と述べた。

カナダでは国内でこれまでに5件の感染を確認。政府は現在、中国から約300人の自国民を退避させようとしている。

ウィルキンス氏は、過去に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)の感染拡大では、発生源がカナダ国内でなくてもカナダ経済が影響を受けることが示されたと指摘。「原油安のほか、商品(コモディティー)価格の低下などの形で影響が出る可能性がある」と述べた。

この日は欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が新型ウイルスの感染拡大で世界経済に対する不確実性が増大していると警告した一方、レーン専務理事兼主任エコノミストは注視しているとしながらも、ウイルス感染拡大の過去の事例を見ると経済や市場は短期間で回復していることが多いと述べた。

ウィルキンス氏も同様の見解を示し、「長期化した場合、どのようなリスク管理が必要か検証する必要がある。こうした検証は企業投資と個人消費を中心とするデータに基づいて実施される」と述べた。

ウィルキンス氏はこのほか、生産性向上に向け適切な措置が実施されれば、カナダ経済は成長低迷の長期化を回避できるとの見方を示した。

「カナダを含む先進国は、繁栄を支援すると同時に、将来的に成長と需要減退が恒常化する事態に陥らないよう、一段の取り組みを実施する必要がある」と指摘。カナダ経済については、高齢化の進展や生産性の伸び鈍化などの長期的な要因が成長トレンドの重しになっているとしながらも、移民の受け入れのほか、インフレ率が中銀目標の2%近辺で安定的に推移していることで、影響の一部は緩和されていると述べた。

その上で、現在のような低金利環境では、景気刺激のために利下げを行う余地は小さくなっていると指摘。ただ生産性向上には、地域間の商取引を巡る障壁の撤廃や、新技術への投資など、複数の検討可能な対策が挙げられるとした。

この日の講演では将来的な金利変更については言及しなかった。ウィルキンス氏は任期満了に伴い6月に退任するポロズ総裁の有力な後任候補の1人とされている。

カナダ中銀は1月22日の決定会合で政策金利を1.75%に据え置くことを決定。他の主要中銀が金融緩和に動く中でもカナダ中銀は2018年10月以降、金利を据え置いている。

*内容を追加しました。