(ブルームバーグ): 野村ホールディングス(HD)は、昨年12月に開業した中国での合弁証券について、富裕層事業を前面に打ち出すことで投資銀行業務中心の欧米外資系証券会社との差別化を図る方針だ。一方、同国で感染が広がる新型コロナウイルスについては、事業計画に与える影響を懸念している。

中国事業を率いる飯山俊康執行役員が3日、ブルームバーグとのインタビューで、富裕層向け事業が中心の外資系証券会社は中国では同社が初めてとの認識を示した上で「それだけで十分差別化できている」として、先行者利益を狙っていく考えを示した。

例えば人材確保において、初の本格的な富裕層向け事業を始める外資系で働きたいとの希望者は多いと指摘。競合が少ないこともあり、すでに現地で雇った約100人は優秀で順調に採用できているとした。富裕層向け事業でライバルである地場証券と比べ、国際分散投資の機会を提供できる点で有利だとみている。

同時期に中国市場への参入が認められた米銀JPモルガン・チェースやスイスのUBSグループは投資銀行業務を先行させる計画を示している。

野村HDは昨年12月、過半を出資する「野村東方国際証券」を開業。現時点の計画では20年中に人員を約200人体制と倍増し、現在の上海1拠点から北京、深圳にも出店を拡大する。4-5年後をめどに投資銀行業務を含むフルラインの証券会社とし、人員も400ー500人に増やしたい意向だ。

新型コロナウイルスについては、今後の展開次第としつつも「全く何の影響もないというのは、ここまで大きくなってくると現実的ではないかもしれない」と述べ、中国での拡大戦略に影響が出る可能性を示唆した。「新型コロナウイルスも含めて、状況に応じて修正すべきものは修正しながらやっていきたい」とも述べた。

合弁証券の会長に当たる余青董事長、社長に当たる孫冬青総経理はともに女性。トップを女性が占めたことについて、飯山氏は「優秀な人を採用した結果そうなったということだが、きめ細かなサービスを求められる富裕層向け事業で、少し特色のあるサービスができるのではと楽しみにしている」と期待を示した。

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