「感情」が正しい判断の邪魔をする。人が「間違う」メカニズム

2020/2/6
私たち人間は、根拠のない「感情」に揺さぶられる、矛盾を内包した存在だ。ゲームで熱くなって課金してしまったり、株が値下がりしたタイミングで我慢できずに売ってしまったり、自分でルールを決めていても、感情によって判断を誤った経験は誰にでもあるだろう。
「人間の感情」に左右されないという意味で、投資における「自動売買」は一歩有利だとも言える。デジタルハリウッド大学で教鞭をとるゲーム開発者の饒平名秀成氏と、トライオートFXの開発アドバイザー・栢本淳一氏が、感情と判断の関係性、テクノロジーの進化がゲームと投資にもたらす未来について語り合う。
人間は感情に揺さぶられて間違った選択をする
栢本 過去に、本当に多くのお客様が「感情」に揺さぶられて間違った選択をするのを目の当たりにしてきました。投資において、人間の「感情」はほとんどの場合マイナスに働くと言っていいでしょう。
 人間は、少しでも損を抱えると、損に囚われ、全体を冷静に見ることができなくなります。それで、焦って間違ったタイミングで損切りをしたり、そのまま持っていれば大きな利益につながったものを、小さな利益で確定したりするのです。
饒平名 投資はお金の損得に直結するから、感情をコントロールするのは難しいですよね。
 でも、ゲームのプレーヤーも感情に左右されるのは同じで、スマホゲームなど課金制のコンテンツは、まさに感情のコントロール設計次第で売上が変わります。どのタイミングでどういうイベントを行い、アイテムを売るか、難易度設計をどうするか、絶妙なコントロールが必要です。
 たとえば、ゲームが難しすぎても簡単すぎてもプレーヤーを夢中にさせることはできないし、瞬間的に売上が上がっても、それによって「お金を使ってしまうゲームだ」と認識されれば継続してもらえない。
 年齢層が低いゲームなら、月額の課金制限がクリアされる毎月1日にイベントを行うのが通例だったりします。軍資金が多い状態ですからね。僕たちの業界では「焼き畑」などと呼んだりしますが、プレーヤーの軍資金を使い果たさないようなコントロールも大切なんです。
栢本 ゲームではいろいろなところに感情とのタッチポイントがあり、緻密に設計されているんですね。
饒平名 「このストーリーの流れなら、このパスを選択するだろうな」とプレーヤーの感情を想像して、意図通りに動いてもらえるようなUI/UXを設計するのもそのひとつ。
 オープンワールドのゲーム(攻略手順が定められておらず、舞台となる仮想世界を自由に動き回って探索・攻略できるように設計されたゲーム)であれば、3D空間に目指したくなるような大きなモニュメントや標識など象徴的なものを作り、そこに集まるよう誘導したりもします。
iStock.com/RyanKing999
栢本 投資においてお客様の感情を揺さぶるのは「市場」で、私たち証券会社がお客様を誘導するようなことはありません。ですが、お客様の売買ログを分析すると、感情の動きは想像できます。
 たとえば、過去にドル円相場が急落した際、そろそろ相場が上がるだろうという想定で、買い増しをしたお客様がいました。
 それ自体は悪手ではありませんが、予想に反して下落が続いたために、5分ごと、1分ごとに連続で買い増しを行い、最後のほうは1分に相当数の買い増し注文を出していました。
 その後、相場は持ち直したので、そのまま持っていれば少なくとも損はせずに済んだのに、最終的には積み重なった「損」に感情が耐えきれず、底値に近いタイミングで損切り、という最悪のケースとなりました。
 一度冷静に「買い」の注文を見直させたり、「損切り」を思いとどまらせたりできなかったのは、歯がゆいですね。
饒平名 それだと、結果的に「焼き畑」になって、投資をやめてしまう可能性もありますね。
栢本 お客様によっては損をしないために、仕事中も1時間ごとにトイレで相場をチェックするようになってしまい、日常生活に支障が出るケースもあります(苦)。焦りながら急変した相場を見れば、ますます正しい判断はできなくなるでしょう。
鉄の掟に従える強靭なメンタルがあるか?
栢本 こういったことを考えると、感情に左右されずに取引ができる「自動売買=トライオートFX」の役割は大きいと思います。
 トライオートFXをシンプルに説明すると、「if文の組み合わせ」で作られたルールのもと、自動で売買をするサービスです。たとえば「◯円に下がったら買い、◯円に上がったら全部売ります。これくらいの損を抱えたら損切りします」といった具合です。
 それを自分で詳細に設定することもできますし、過去に実績を出しているものから選択することもできます。
饒平名 実はまったくFXをしたことがないのですが、自動売買=プログラムに取引を任せる、ということですよね。自動売買に頼らず、自分でルールを設定するわけにはいかないんですか。
栢本 投資経験者の多くは「自分のルール」を持っているので、もちろん自分で取引したいという方も一定数いらっしゃいます。そういった方たちのほとんどは、「ここまで損が膨らんだらやめる」などの鉄の掟に従える強靭なメンタルを持っています。
 私たちでさえ、「なぜこのタイミングでそんな正確な決断が連続でできるんだろう」と驚かされることがあり、未来から来た人なのかと思うことすらあります(笑)。
 ですが先ほどの例のように、相場を目の当たりにすると、感情に左右されてルール破りをしてしまう人が非常に多いです。自動売買には感情の入る隙間がないので、その心配がありません。
饒平名 自分でルールを設定しても、現実にはなかなかワークしないということですね。ゲームの世界の課金の仕組みも同じです(苦笑)。
想定外の動きをする市場は「真のラスボス」だ
饒平名 ゲームの世界では、プレーヤーが育てた「強い=実績のある」キャラクターを売買することがあります。
 ゲームは楽しくても、レベル上げのための地道なバトルは楽しくなかったりする。時間的コストを考えて、育ったキャラクターを買う、という考えが出てくるのでしょう。
 自動売買のメリットは、それと似たところがあると思いました。感情に左右されないだけでなく、感情的なリソースを奪わず、時間的な部分でも余裕が生まれる。仕事に集中できれば、結果的に投資できる原資が上がるというメリットもあるんじゃないでしょうか。
栢本 たしかにそうですね。頻繁にトイレでチェックすることも、睡眠時間が削られることもなくなる。「朝起きたら利益が出ていた」となれば、いい1日のスタートが切れるかもしれません。逆のケースもありますが(苦笑)。
 市場の予測をすることは不可能ではありませんが、相当に難しいものです。上がると思ったら下がる、GDPとまったく連動しない……といったことが頻繁に起こる「真のラスボス」のようなものですから。
iStock.com/zoom-zoom
饒平名 「真のラスボス」ですか。自動売買と同じで、「if文」の羅列でラスボスの行動パターンを作ることが多いのですが、AIなどで勝ちパターンを学習すれば、絶対に勝てないラスボスも作れてしまう。
 でも、ゲームはあくまでエンターテインメントなので、「絶対に勝てないラスボス」ではいけないんですよ。それでは継続的に人気のあるゲームにはならない。
 「試行錯誤して頑張ったら勝てる」という絶妙なレベル感が人気ゲームの鉄則で、接待ゴルフに近いですね(笑)。「レベルデザイナー」という専門職が難易度設定をしています。
栢本 「レベルデザイナー」という仕事があるのですね。
饒平名 はい。ゲーム業界を志す学生には人気の仕事です。
栢本 昔、「ドラゴンクエストⅡ」で破壊神シドーが「ベホマ(ドラクエシリーズに出てくる回復呪文)」を唱えて完全回復したときは衝撃を受けました。Ⅲ以降は唱えなくなったということは、プレーヤーに相当文句を言われたのかな。
饒平名 昔のゲームには、今のように精緻に難易度を調整するレベルデザイナーもいなかったから、「誰がクリアできるんだろう?」というゲームもありました。
 ただ、ゲームであれば「どれだけ長時間生き延びたか」を勝敗の軸にすることもできますが、投資の世界で完全回復するラスボスがいれば、成すすべがないですね。
栢本 そうなんです。でも、複雑な要因が増えれば増えるほど、「if文」のようにシンプルなことを続ける人が強い。「目を閉じて相場に向かう」くらい、あらゆるものに惑わされない軸にこそ、強みがあると思います。
 そして、上手く作られていないディープラーニングモデルに基づく投資よりも、シンプルな「if文」に基づく投資のほうが良い成績を出すことは、十分に起こりえると思います。
AIが「つぶやき」を投資に活用する時代
饒平名 素朴な疑問ですが、たとえばAIのディープラーニングによって「確実に勝てる」プログラムができたら、みんながそれを使うようになり、誰も勝てなくなるんじゃないですか。
栢本 おっしゃるとおり。証券業界には「人の行く裏に道あり花の山」という格言があり、つまりみんなと同じことをしていればなかなか勝てません。だからこそ、自動売買にも進化が欠かせないんです。
饒平名 機械が学習したデータに対して、「人間だったらこれを選ぶだろう」という感情的選択を組み合わせることで、新たな技術革新が生まれる気がしますね。
栢本 近いところでは、TwitterなどSNS上にあふれている市場参加者の感情を分析し、投資に活用する取り組みをはじめています。ポジティブやネガティブ、強気や弱気などのセンチメント(市場心理)をAIに与えることで、「市場がポジティブな反応だからこう動こう」と判断する。
 今はチャレンジの真っ最中ですが、いつかそんな世界が実現するかもしれません。
饒平名 それがもっと進化すれば、「アメリカの大統領がこんな発言をした」というニュースだけで、「市場参加者の多くはこう解釈をして、こういう感情になるだろう」と先読みできるんじゃないですか。
 つぶやきから感情を予測できるなら、一次情報に触れた際の解釈の予測も可能だと思うんです。そんな研究があったら面白いですね。
栢本 それは面白い。原因と結果をそこまでダイレクトにつなげる研究は見たことがありませんが、技術はどんどん上がっています。ゲーム理論を活用した動きには、今後もチャレンジしていきたいです。
 もうひとつ、新しい取り組みとして、お客様一人ひとりにAIエージェントを作る「MAi MATE」というサービスも始めています。
 取引したい銘柄や重視するテクニカル指標・ニュース、リスクの許容度を選択してエージェントを作り、経験と学習を重ねて育てていくのです。2020年夏頃の実取引化が決定しました。
 「真のラスボス=市場」に一緒に立ち向かうパートナーと思ってもらえるよう、ゲームのキャラクターのように可愛いデザインにしています。
饒平名 ゲームの世界でAIが活躍するのは、木の葉の揺れ方、風の流れ方、流体シミュレーションを使った海の水面の生成など、自然界にある事象の再現が多いです。
 キャラクターの移動経路の計算のように人間の行動を模擬したものや、街や地形の自動生成のようなテーマも、現実世界を元にした仮想世界の構築を効率的に行えるようにしたものです。
 専門のアーティストの仕事が機械化されることで、結果的に制作コストを抑えて、少人数で作品づくりが進められるようにもなりました。
 ゲーム性を考えれば、ゲームを考える側の「作家性」はこれからも重要になっていく。人はよりクリエイティブな方向に時間とパワーを使い、システムへの落としこみはAIがやってくれる。そうなれば、ゲームはもっともっと面白くなると思います。
栢本 それは楽しみですね。先ほどの「ニュースからの感情の先読み」が実現すれば、「Aという反応を示した際の5分後の世界」という仮想世界をゲーム上で事前に試して、その結果で実際の投資の判断をする、なんてことができるかもしれません。
饒平名 ゲーム機能の拡張と、投資の新しいシステムが組み合わさった「5分後のパラレルワールド」。実現したら面白いですね。
(執筆:田中瑠子 編集:大高志帆 撮影:木村雅章 デザイン:砂田優花)
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