[東京 28日 ロイター] - 政府は28日、衆参両院の議院運営委員会理事会に、日銀審議委員として安達誠司・丸三証券経済調査部長を充てる同意人事案を提示した。衆参両院で同意されれば、3月25日に任期が切れる原田泰委員の後任となる。

安達氏は1965年生まれで東京大学経済学部卒。大和総研経済調査部、ドイツ証券経済調査部シニアエコノミストなどを経て、現在、丸三証券経済調査部長。

<日銀ボードの分布図は不変、市場には「さざ波」もたたず>

安達氏は、退任する原田委員と同じリフレ派の論客とみられている。2015年には浜田宏一・米エール大名誉教授(内閣官房参与)との共著を出版し、日銀の金融緩和の効果として「円安の実現という形で発現した可能性が高いが、株高による資産効果も、個人消費の拡大という面ではそこそこ影響があったと思う」と指摘している。

ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは、「日銀ボードメンバーのいわゆる分布図も現状維持が想定され、今の日銀の体制を維持させるという意図がみえる」と指摘。市場には「さざ波」もたたないだろうとの見方を示した。

アライアンス・バーンスタインの債券運用調査部長、駱正彦氏は「原田委員と同様に大規模な追加緩和を提唱し、現行の政策運営に反対票を投じるかどうか注目だ」と指摘。また「現状の金融緩和政策が限界にきている中で、金融・財政政策のポリシーミックスに安達氏がどのくらい傾くかに関心が集まりそうだ」とみている。

安倍政権の思惑もあるとの見方もある。ピクテ投信投資顧問の市川眞一シニア・フェローは「今秋の解散・総選挙のシナリオといったことを考えるなら、金融政策の変更は大きなリスクだ」と指摘。「現在の政策が経済に対して効果があるかどうかというよりも、金融政策に対する期待がマーケットに影響を与えないということを重視した人事案と言えるのではないか」と話した。

<「フォワードガイダンス」へのスタンスは>

退任する原田審議委員は、現在の金融市場調節方針について「長期金利が上下にある程度変動しうるものとすることは、政策委員会の決定すべき方針として曖昧(あいまい)過ぎる」として反対している。

一方、「政策金利について、物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している」としているフォワードガイダンスには賛成しており、「安達氏が原田氏に近いのか、(フォワードガイダンスにも反対している)片岡氏に近い立場なのかも注目材料」(大和証券チーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏)という指摘もある。

日銀では、トヨタ自動車出身の布野幸利審議委員も今年6月30日に任期満了を迎える。

*内容を追加します。

(和田崇彦、竹本能文、マーケットチーム 編集:田中志保)