2020/12/17

なぜゴールドマン・サックスで働くことが「圧倒的な自己成長」に繋がるのか

NewsPicks, Inc. Brand Design Senior Editor
増加の一途をたどるM&Aや企業の多様化する資金調達をサポートし、顧客企業の成長を後押ししてきた投資銀行。その役割は今、さらに広がり、変化しようとしている。とかく「エリート集団」「激務」といったイメージが先行するが、実際に最前線で働くインベストメント・バンカーたちはどんなマインドを持って日々の業務にあたっているのか。ゴールドマン・サックスで活躍する二人のヴァイス・プレジデントに、投資銀行業務のリアルと拡大する役割について聞いた。

中途と再入社だから認識できた、ゴールドマン・サックスの存在感

──おふたりはどういう経緯でゴールドマン・サックス(以下、GS)に入社されたのでしょうか?
鎌田 私は戦略コンサルティング・ファーム出身の中途入社です。新卒でITコンサルに入社し、戦略コンサルを経て、米国のビジネススクールに留学しました。
 MBAで初めてファイナンスの分野に触れて面白そうだと感じたことと、グローバルな環境で新たなチャレンジをしてみたいという気持ちから、GSに入社しました。
 入社当時はファイナンスの実務経験がゼロだったので、キャッチアップするのが大変でした。それでも、主体性を持って仕事に取り組む姿勢といったプロフェッショナル・ファームとしての基本的な働き方は、前職と共通していると感じました。
 何より、周囲の同僚が温かく、時に厳しくサポートしてくれたのが、大きな力になりましたね。正直言うと、外資系の投資銀行は職場環境や人間関係が相当ドライだろうと想像していたんですが、良い意味で裏切られました。
 戦略コンサルティング・ファームと比べると、投資銀行ではお客様にアドバイスする内容がM&Aや資金調達などファイナンス領域が中心にはなりますが、経営者目線が求められる点は共通します。
 そこへさらに、ファイナンスの専門家としての深い知識と経験が求められることは、非常にやりがいがあると感じました。
山下 私はいわゆる「出戻り」です。新卒でGSに入社し、M&Aや資金調達といった投資銀行業務に6年間携わった後、20代後半でテクノロジー・スタートアップに飛び出しました。
 知人でも起業する人がいたり、大学でコンピューター・サイエンスを学んでいたこともあって、スタートアップに挑戦してみたいと思いました。
 スタートアップでは数々の失敗を含め、大企業ではできない経験を積むことができました。一番の学びは、「前のめりに自分で仕事を作り出していかないと、やることがない」というマインドセットの変化ですね。
 そのスタートアップが数年で買収され、その後、元上司に声をかけてもらったのをきっかけに、GSに再入社することになりました。
 GSは金融機関でありながら最先端のグローバル・テック企業と接点があり、彼らと密なコミュニケーションができるという点で、とても魅力的な職場と感じます。
 サンフランシスコで勤務していた時には、現地でたくさんのスタートアップ企業の創業者と出会い、資金調達のお手伝いができたことも刺激的な経験でした。
 テクノロジーの分野には今も変わらず思い入れがあるので、テクノロジーのわかるインベストメント・バンカーを目指して努力を重ねていきたいと思っています。
──おふたりは今、どんなお仕事をなさっているのですか?
鎌田 伝統的な投資銀行業務はM&Aアドバイザリーと資金調達の二つに大きく分けられます。前者は顧客企業のM&Aに対して助言を提供するもので、M&A全体のプロセス管理やデュー・デリジェンスのコーディネーション、バリュエーション(価値算定)の提供、交渉戦略の立案・遂行といった役割が含まれます。
 後者の資金調達は、顧客企業の資金調達ニーズに対し、GSのグローバルなネットワークを活用して世界中の投資家から資金を融通する業務です。IPOや公募増資、社債発行などがあります。
 私たちのような投資銀行で働くバンカーは、日本を代表する企業のCEOやCFOといったトップマネジメントと日本経済や業界全体の未来について議論したり、今後の企業の成長を大きく左右するM&Aや資金調達の意思決定と実行に関わることができます。
 GSという看板があるからこそできる刺激的な体験で、まさにこの仕事の醍醐味だと感じます。とはいえ、すべての案件が成就するわけではありませんし、大変なこともたくさんあります。
 それでも、新聞の1面に載るような大きなディールを成功させ、苦楽を共にしたお客様から「本当にありがとう」という言葉を頂けた時には、それまでの努力がすべて報われるような充実感でいっぱいになります。

伝統的な投資銀行業務の枠組みを超えたソリューションを提供

山下 従来の投資銀行の業務以外にも、「アクティビズム・ディフェンス」といわれる新しい仕事も増えてきています。いわゆる「モノ言う株主」であるアクティビストへの対策を、顧客企業にアドバイスする仕事です。
 ここ数年で日本企業を標的としたアクティビストの活動が活発化していますが、日本市場ではまだ一般的ではないため、その対応サポートに関するニーズが急激に高まっています。
 GSはここ5年で世界のアクティビスト対策案件の75%を手掛けており、日本市場でも最も経験あるアドバイザーとして数多くの顧客企業から依頼を頂いています。
 また、デリバティブを活用した資金調達や、リスクヘッジ手法の提供も積極的に行っています。顧客企業のビジネスがどんどんグローバル化する中で、資金調達やリスクヘッジへのニーズは多様化する一方です。
 伝統的業務だけでなく、顧客ニーズに合わせたソリューションの提供が求められています。
──企業への投資も積極的に行っていると聞きました。
鎌田 はい、GSはこれまでにも三井住友フィナンシャルグループやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどに対する投資実績がありますが、最近ではスタートアップへの投資も行っています。
 私が担当した案件としては、2017年のクラウド名刺管理サービスのSansan(2019年に東証マザーズ上場)への出資があります。
 Sansanは、私がバンカーとして初めてスタートアップ企業への投資に関わった案件で、正直手探りの部分もありました。
 それでも、グローバルではウーバーやフェイスブックへの出資など多くの実績があり、サンフランシスコ勤務時代の同僚からのフルサポートが得られたことと、東京でもシニア・リーダーシップが強力にバックアップしてくれたこともあり、何とか成功に導くことができました。
 さらに2019年には、データマーケティングを手掛けるフロムスクラッチや、NECからのスピンオフであるdotDataへ出資するなど、少しずつ実績を積み上げることができています。
 これまでGSのお客様は大企業が中心でしたが、こうした出資をきっかけに、スタートアップ企業のグローバルな成長をサポートできるのは、これまでとは違ったやりがいを感じます。
 長い目で見れば、将来これらの出資先企業にM&Aや資金調達が必要になったとき、本来の投資銀行業務でもお役に立つことができれば素晴らしいですね。
 日本経済が強くなるには、社会へのインパクトが大きい大企業はもちろん、市場に新風を吹き込むスタートアップ企業も不可欠です。その双方に関わることができているのは、とても光栄ですし、本当にワクワクしますね。
──グローバルでは、Appleと組んでApple Cardを発行する他、個人向けオンラインバンキングサービス「Marcus」といった新規事業をスタートさせていますね。
山下 はい、GSの経営陣は危機意識を持って、イノベーションに挑戦しているのだと思います。
 私自身も米国勤務時にMarcusを利用していましたが、銀行口座の開設や資金の移動がすべてオンラインで素早く完結するなどUX(ユーザー体験)が洗練されていて、これまでにないバンキング体験だと実感しました。
 新規事業に限らず、GSはテクノロジーが競争力の源泉の一つであると考え、毎年莫大な投資を行っています。私たちも日々の投資銀行業務で、テクノロジーが着実に進化しているのを実感しているところです。
──GSで働くことの魅力とはなんでしょうか?
山下 私は「出戻り社員」ですが、一度外に出たことで改めて気づいたGSの魅力は3つあります。
 一つ目は「成長機会」です。我々の手掛けるM&Aや資金調達というのは、顧客企業にとって重要な意思決定事項であり、事業、財務、法務、税務や人事、そして市場の反応などあらゆる角度から検討が必要です。
 それらを共に議論する顧客企業のCEOやCFOなどの経営幹部は、いずれも日本の産業界をけん引してきた実力者や、未来を担うニューリーダーと呼ばれる人たちです。
 若いうちから、こうした人たちと接する環境に身を置くことで、否応なしに自らの成長を実感することができます。
 二つ目は「ベスト・プラクティスの蓄積」です。GSにはこれまでの長い歴史や数多くの案件で培われた経験と知見が蓄積されています。
 ファイナンスに関連するテクニカルな側面はもちろん、顧客や交渉相手とどのように接するかといった、人間力ともいえる実践的なノウハウも含まれます。
 これらを経験豊富なプロフェッショナルから直に学べるという最高の環境で、いつも新鮮な気持ちで仕事に取り組むことができています。
 三つ目は「人」です。GSにはあらゆる分野と地域に専門家がおり、必要な時にはいつでも電話やメールでコンタクトできます。言語や人種といったバックグラウンドは違っても、チーム全員が「顧客への価値提供」という共通の目標に向け、ひたむきに働いています。
 こういう環境で切磋琢磨できることは何より誇らしく、幸せだと感じます。
──投資銀行は激務というイメージもあります。
鎌田 確かに案件の最中は、必要に応じてニューヨーク、サンフランシスコ、ロンドンと連携しながら、24時間態勢で仕事をハンドルする必要があります。
 時差もある中で電話会議を頻繁に行いますし、場合によっては急に現地に飛んだりもするので、決してラクな仕事とは言えません。
 一方で、アウトプットを重視するカルチャーなので、自分で仕事をマネジメントできてさえいれば、自由な形で働けるフレキシブルな職場環境だと思います。
 私の場合は幼い息子たちとの時間を大切にしたいので、仕事が落ち着いた時は早く帰ったり、子どもが病気の時は自宅勤務に切り替えたりと、できるだけ家族と過ごすようにしています。
 お客様に最良のサービスを提供するという重要な部分はブレない一方で、効率化できる部分は積極的に合理化していく柔軟な発想で、働き方の面でも少しずつ進化してきているように思います。
 服装についても顧客と会う時以外はカジュアルでOKですし、世の中の「堅い」イメージとは、実際、かなり違う気がしています。

コロナ禍ではリモートワークとテクノロジーを活用

──コロナ禍の中、どのような働き方でクライアントのニーズに答えているのでしょうか?
山下 まず、GSではCOVID-19が拡がる前からリモートワークが広く活用されていました。BCPの一環というよりは、海外との時差がある中で柔軟な働き方を確保し、ベストなアウトプットを出すために、リモートワークは当然の環境として受け入れられていたということです。
 2020年に入り、COVID-19の感染拡大が進む中で、GSでは社員の大半がリモートワークに移行しました。BCPテストとして既に訓練していたことも功を奏し、ビジネスに影響を与えることなくスムーズに移行を実現できたと思います。
 大きく変わった点としては、ビデオ会議がより一般的になったことが挙げられます。ビデオ会議システムのZoomを利用し、社内だけではなく、クライアントと密にコミュニケーションを取っています。
 面白いことに社内では「出張がなくなった分、よりクライアントミーティングの回数が増えた」というデータもあります。
 案件のもっとも重要な場面では、投資銀行部門の東京チーム全員を常にZoomで繋ぎながら、メール・チャット・電話で海外オフィスや他部門と連携を取り、案件執行を行います。
 働く場所や働き方は変わりましたが、あらゆる手法を駆使して「クライアントのニーズにお応えする」という目標はまったく変わりません。

中途採用には「即戦力」より重要なものがある

──どんな人材を求めていますか。
山下 誤解を恐れずに言えば、中途採用の若手に即戦力のスキルはあまり期待していません。金融やファイナンスの知識や経験があるに越したことはないのですが、必須ではありません。
 むしろ、様々なバックグラウンドや得意分野を持つ人を採用することで、組織のダイバーシティを広げていきたいと考えています。
 中途採用の仲間に期待するのは、「伸びしろ」や「成長意欲」です。具体的には、新しい仕事にチャレンジしたいという意欲を持ち、前向きに仕事に臨める人です。
 また、その意欲を持ち続けるための「粘り強さ」も重要です。我々の仕事は華やかに見えて、実際は地道な仕事の積み重ねで、上手くいかないことや辛いこともたくさんあります。
 日々の仕事の中でも少しずつ自身の成長を見出し、折れることのない情熱を持って取り組む人と一緒に仕事をしたいですね。
鎌田 もう一つ大切なのは「チームワーク」です。GSでは案件の性質に応じた専門家を束ねてチームを組成し、議論を重ね、最適なソリューションを提供できることが最大の強みなので、チームワークの重要性があらゆる場面で強調されるからです。
 そのためには、各個人がこのチームワーク文化を理解し、チームにどう貢献するかを常に意識することが求められます。
 案件がスタートしたら、全体をリードするシニアバンカーと、若手のアナリスト/アソシエイト(ジュニアバンカー)を含む4~5名でチームを組みます。
 シニアバンカーが案件の方向性や顧客企業の経営層とのコミュニケーションをリードし、ジュニアバンカーが分析やデュー・デリジェンスなど、現場レベルでの案件運営を担います。
 仕事の多くはグローバル案件なので、東京だけでなく海外拠点の仲間ともチームを組んで進めていくことになります。
 案件が成就できた時も「誰か一人の手柄」ということはあり得ませんし、皆の力で成果を出すことに喜びを感じられる人と一緒に働きたいですね。
 そのために我々シニアバンカーは、今の若手社員や将来入社する皆さんにやりがいを持って楽しく働いてもらえる場を用意することが責務だと思っています。私自身、マネージャーとしても、日々成長する必要性を痛感しています。
山下 GSは外から見ると、「外資系のドライな集団」という印象があるかもしれませんが、私個人はまったく違う印象を持っています。
 「成長意欲」や「チームワーク」が重視され、それらを満たす若手には早くから機会を与え、温かく成長を見守る文化があります。そういう意味では「ファミリー」という表現に近いのではないでしょうか。
 「情熱を持って仕事に取り組みたい」「長期的に成長したい」という人たちが仲間に加わることで、組織全体に活力が湧いてきます。私自身もそのような高い志を持つ仲間と、一歩ずつ前進していきたいと考えています。