[ワシントン 8日 ロイター] - 世界銀行は8日発表した経済見通しで、2020年の世界全体の成長率予測を2.5%とし、昨年6月時点の2.7%から引き下げた。米中貿易摩擦が緩和したにもかかわらず、世界の貿易と投資の回復が遅れていると分析した。

2019年の成長率予測も0.2%ポイント引き下げ、2.4%とした。10年前の金融危機以降で最も低い成長率となる。20年は若干の改善を見込むものの、米中貿易摩擦や地政学的緊張を巡る不透明感に影響を受けやすい状況が続くと指摘した。

世銀のアイハン・コーゼ見通し局長は「2018年に始まった景気減速はとりわけ昨年、世界の経済活動や貿易、投資に大きく響いたが、(20年に)緩やかな成長加速に転じる」と述べた。そのうえで「改善を見込むが、見通しは総じて弱い」とした。

最新の経済見通しは米中通商交渉のいわゆる「第1段階」合意を考慮に入れている。コーゼ氏は、合意の一環である米国による対中関税率引き下げが貿易に与える影響は「小さいものにとどまる」が、部分合意そのものが企業の景況感や投資見通しを押し上げ、貿易の伸び加速に寄与すると予想した。

世界貿易の伸び率は19年は1.4%と、金融危機以降で最低となったとみられるが、20年には1.9%に改善するとの見通しを示した。世銀のデータによると、2010年以降の年間伸び率の平均は5%で、これを依然下回ることになる。

世銀の当局者らは、米・イラン間の緊張が経済成長に与える影響を推計することはできないとしながらも、不透明感が拡大し、企業の投資見通しに悪影響を及ぼすだろうと述べた。

<新興国は成長加速へ>

先進国(米国、ユーロ圏、日本)全体の成長率は20年に1.4%と、19年の1.6%から鈍化すると予想。両年とも従来予想から0.1%ポイント下方修正した。製造業が引き続き弱いほか、米国がこれまで発動した関税や報復措置の悪影響を理由に挙げた。

一方、新興国の成長率は20年に4.3%と、19年の4.1%から加速する見通し。ただ、6月時点の予想からは0.5%ポイント引き下げた。アルゼンチンとイランは20年にリセッション(景気後退)を脱却する見通しで、ブラジル、インド、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、トルコも19年の減速から回復するとみられている。

<中国は減速>

中国の経済成長率は、米国の追加関税などを背景に20年に5.9%に減速する見通し。6月時点の予想から0.2%ポイント下方修正した。

コーゼ局長は19年についても、米国との貿易戦争が中国の製造業や輸出に大きな打撃を与えたことから、成長率予想を6月時点から0.1%ポイント引き下げて6.1%としたと説明。シャドーバンキング(影の銀行)に対する規制強化も投資の抑制につながった。

米中貿易摩擦が再び激化したり、債務処理による混乱が広がるようなことがあれば中国経済の見通しはさらに悪化する可能性があるが、より急激な景気減速に見舞われたとしても、中国にはその影響を緩和するための政策余地が十分あると同局長は指摘した。

*内容を追加しました。