【鈴木幸一】日本はIT業界とメディアが変わらないと永久に負ける

2019/12/25
日本には「IT産業」と呼べるものはない──。
そう聞くと、違和感を持つ人もいるだろう。しかし、1992年からインターネットの商業化に携わってきたインターネットイニシアティブ(IIJ)の鈴木幸一会長CEOにとって、この危機感はなくなるものではない。
日本で初めてインターネット接続サービスを提供するなど、インターネット企業の草分けとして知られる鈴木会長は、2015年の著書『日本インターネット書紀』(講談社)にこうつづっていた。
日本に「IT産業」と呼べるほどのものはなく、「IT利用産業」のみが存在する。それが、20年以上インターネットに携わり続けてきた私が抱く危機感である。
46歳で起業し、インターネットに黎明期から携わり、1995年にはアメリカに進出。1999年に米ナスダックに上場するなど、常にグローバル思考で歩んできた鈴木会長から見ると、今の日本のIT業界には「物足りなさ」が消えない。
「いくら言っても変わらないから取材はめったに受けない」とぼやく鈴木会長が、NewsPicks編集部の独占インタビューに応えた。
日本のインターネットを築いた一人で、新聞社やテレビ局のメディア業界の幹部とのパイプも太い「73歳の重鎮」は、今何を考えているのか──。
日本のインターネットの現在地と未来を考える。
鈴木幸一(すずき・こういち)IIJ代表取締役会長CEO
1946年、横浜市生まれ。早稲田大学文学部を卒業後、1972年、日本能率協会に入社。1983年、日本アプライドリサーチ研究所代表取締役。1992年12月、インターネットイニシアティブ(IIJ)を創業。1994年、代表取締役社長兼CEOに就任。2013年、代表取締役会長兼CEOに。テレコムサービス協会で会長、日本最大級のクラシック音楽の祭典「東京・春・音楽祭」で実行委員長も務める。2015年、毎日新聞社の「第35回毎日経済人賞」を受賞。73歳(撮影:佐々木 龍)

ITの利用だけなら「駅弁屋」と同じ

──著書で『日本に「IT産業」と呼べるほどのものはなく、「IT利用産業」のみが存在する』と書いていますが、今の状況はどう見ていますか。
鈴木 いまだに日本のIT企業は、ITを利用しているだけの企業が多いですね。