リクルート創業期の「心理学的経営」とは何か?
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リクルート創業期の「心理学的経営」
”リクルートの中心には、いつも「個をあるがままに生かす」という思想がありました。この思想をリクルートは長く継承してきました。江副と大沢は、社内報などで、「(組織の)“動脈硬化”はなんとしても回避しなければならない」といった言葉を繰り返し発しています。彼らは、組織の固定化や階層化を何よりも恐れていました。意図的にカオスやゆらぎを生み出し、組織の固定化・階層化をできるだけ遅らせようとしていました。「あいまいそのものを経営のポリシーに」しており、「不均衡、不安定状態の創造こそ活性化の第一歩になる」と捉えていたのです。
『心理学的経営』で、大沢は認知的不協和の理論を紹介しています。認知的不協和とは、自分の選択や決定と適合しない情報が入ってくることで、心が不安定な状態になることです。江副・大沢は、この認知的不協和を組織内に絶えず起こすことで、不安定状態を生み出そうとしていました。なぜなら、私たちは誰しも、無意識に不安定状態を解消しようとするから、そしてそのときに外部情報を積極的に取り入れて、新たな自分や新たな組織を創り出そうと励むからです。つまり、創業期リクルートの経営陣は、組織にカオスを生み出し、社員たちがその不安定状態から立ち直ろうとするときのパワーを原動力に、事業や組織の革新を前に進めてきたのです。
自律的な個を発現させるマネジメントの中心には、自由裁量の徹底があります。江副・大沢たちは、「多様な能力の要求されるマルティプルな仕事に挑戦できる仕事の環境と風土づくり」に力を入れ、部下たちには、サイズは小さくても仕事の一連のフローをなるべく担当できる「自己完結型」の割り当てにこだわっていました。
その一方で、失敗には寛容でした。例えば、失敗した社員をすぐにまた重要なポジションに就けることがよくありました。江副・大沢たちは、不確実なことに挑戦しているのだから、失敗するのは当然だと考えていました。
同時に、社員全員が高いレベルの自律的選択と判断をしていけるよう、経営情報を徹底的に開示する情報開示主義を取っていました。
ワークス研究所・奥本 英宏 さんのレポートです。私の年代ですと「リクルート=リクルート事件」というイメージが鮮明に残っていますが、そのように困難な状況を会社として乗り越えてきたことには「自己組織化」という考え方が根底にあったのだな、と感じます。どんな企業もこれから混沌とした時代の中で「潜在能力」「意欲」を引き出せることが会社や個人の成長・発展に繋がると思います。
心理学者エーリッヒ・フロムの言葉
「愛することは知ることである。愛するための努力は、知るための努力である」
会社を愛してもらうにはまずは知ってもらうこと。
採用も社内エンゲージも『どうやって知ってもらうか』が大切。