【大前研一×オズボーン】2020年以降、「稼げるスキル」とは何か?

2019/12/16
いよいよ、あと半月ほどで2020年代が幕を開ける。これからの10年は、どんな時代になるのか。各分野のトップ経営者や有識者が大胆に予測する「2020年後の世界」。
トップバッターは、ビジネス・ブレークスルー大学の学長で日本を代表する経営コンサルタントの大前研一氏と、論文『雇用の未来』で「10年後には今ある職種の約半分がなくなる」と予言し、世界中から注目されたオックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授の対談をお届けする。
ともに「未来のスキル」について語る当代随一の論客であり、本年のNewsPicksの特集誌面を飾った記事は、記録的なヒットとなった。
そんな2人が占う、2020年以降も「稼げるスキル」とは? そして、フューチャースキルを獲得するために行うべき教育の姿とは? 

「スキル」を変える時代

大前 あなたの以前の論文(「雇用の未来」)が発表された当時(2013年)、一部の人々は「あと20年で47%の仕事がなくなるかもしれないのか。これは大変なことになるぞ」と大騒ぎしました。
かつて、チャップリンが『モダン・タイムス』(労働者が機械の一部になるなど機械文明を皮肉った映画)という映画を撮った当時も、人々はロボットに職を奪われるだろうと騒ぎ、恐れました。
大前研一(おおまえ・けんいち)
リカレント教育を先駆者であるビジネス・ブレークスルー大学の学長。マサチューセッツ工科大学博士。マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。ビジネス・ブレークスルーでは、ビジネス・ブレークスルー大学大学院(MBA)に加え、「稼ぐ力」を身につける「リカレントスタートプログラム」を提供している。
しかし実際には、テクノロジーから新しい仕事が生まれ、仕事がなくなった人々の生活を支えました。
あなたの最近(2017年)の論文(「スキルの未来」)では、これからの時代に新しく生まれる仕事に対応するため、われわれは「スキル」を変えていかなくてはならないという提言がなされています。
あなたの住むイギリス同様、日本は人件費が非常に高い国です。そういう国に住む人間には、あなたのメッセージがとりわけ力強く響くでしょう。
人件費の低い国とまともに戦っても勝負にならないので、より新しい仕事に目を向ける必要に迫られているからです。
そのあたりの話を、今日は深く論じ合えればと思います。
オズボーン 人々が昔から、テクノロジーに仕事を奪われるかもしれないと恐れてきたという点については、まったくその通りだと思います。
その歴史は、チャップリンはおろか、ローマ時代にまでさかのぼります。そして、いつの時代もテクノロジーは、最終的に社会がより良い方向に進むための原動力となってきました。
マイケル・A・オズボーン
AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する日本のAIベンチャー「エクサウィザーズ」アドバイザー。英オックスフォード大学教授。AIが雇用に与える影響に関する論文『雇用の未来』の共著者および『スキルの未来』の著者。オックスフォード大学のAIベンチャーであるマインド・ファウンドリー社の共同設立者かつCSO。機械学習分野における世界的な研究者として、オックスフォード・マーティン・プログラムの共同ディレクター、EPSRCセンター(英国工学・物理科学研究会議)の共同ディレクター、エクセター・カレッジの公式フェロー等広く活躍している。
今、私が恐れているのは、その「移行期」のことです。
長い目で見れば、テクノロジーは新しい仕事を生み出し、豊かさを広範囲に分配するでしょう。
しかし、そこにたどり着くまでの何十年かの間に、取り残されてしまう人が多数出てくる可能性があります。
そんな懸念から、私たちは「スキルの未来」という論文を発表しました。
明日をつつがなく迎えるために、人々はできる限りの武器を手にしておくべきだと考えたからです。

「クリエイティビティ」こそ鍵

オズボーン これから重要になるスキルとは、端的に言えば、「人が得意であって、機械はあまり得意ではないもの」です。