振り返れば、「必要なスキル」はちゃんと持っていた

私が大学の卒業式で演壇に登り、卒業証書を受け取ったのは30年ほど前だ。卒業証書を手にした私の胸の内で、さまざまな感情が渦巻いていたのを覚えている。将来に目を向け始めると、とてつもない不安にも襲われた。安心できる環境をあとにし、社会への一歩をまさに踏み出そうとしていたのだから。
大学を出てキャリアをスタートさせることが楽しみで仕方がなかったが、卒業後の人生がどうなるかは、まったく想像がつかなかった。
そのときはまだ、成功しなければならないという思いに圧倒され、怖気づいていた。失敗は許されないと思っていたのだ。
あの頃に戻れるなら、びくびくしていた21歳の自分にこう伝えたい。「成功するために必要なスキルはもうすべて手にしているよ」と。今は、それがまったくそのとおりであったことがわかる。
私はこのアドバイスを、次のステップに進むために準備をしている若者すべてに伝えたい。

誰もがスキルを身に付けられる時代

あなたたちが受けてきた教育はおそらく、好奇心を膨らませ、学ぶことへの喜びを育むものであっただろう。そうしたものがかけがえのない財産であることは、破壊と変化に満ちた世界へと踏み出していけば実感できるはずだ。もっとはっきり言えば、学び続ける力は、実社会で成功を見出すために必要な唯一のスキルなのだ。
現代では、誰もがスキルを身につけられる一方で、それはすぐに取って代わられてしまう。この先に待ち受けている、あらゆる不確実さに対して備えるために、学び続ける力を養うべく努力してほしい。突き詰めれば、あなたが習熟してきたどんな知識よりも、柔軟な考え方と、どんなときでも変化をチャンスとして受け入れる能力のほうが、価値が高い。
あるときアメリカ中西部地域の顧客サービス・アカウント部門のリーダーとして、男女が管理職レベルまで平等に働くための取り組みを率いた。その経験から私は自らの情熱を活かし、多様性とインクルージョンを推し進めてきた。情熱があったから、私は今日に至るまで先駆者として走り続けられてきたし、職場で人を導く方法を改善することもできた。
帰属意識を育むには、その人の「目立つところ」を受け入れ、そこに焦点をあてることがカギになる場合があると、私は学んだ。つまり、周囲とはなじまない型破りな部分を評価するのだ。これは、自分を含めたあらゆる人間が持つ真の可能性を解き放つうえでの基本となる。
自分のキャリアにとって、重大な転機はいつだったのかを振り返ってみると、それは、ドイツとスイスへ異動し、ある大事な顧客との仕事で5年間ほど責任者を務めるよう辞令を受けたときだ。出産直後だった私は、一家で見知らぬ土地へと移り、新たな生活を始めなくてはならなかった。
けれども、そうしたなかで私は、健全なチームを構築することや、多様なものの見方や文化の差、異なる思考スタイルに耳を貸し、それらを活かすことの素晴らしさについて、驚くほど多くを学んだ。その5年間は結局、キャリアにとっても、異文化にどっぷりと浸った幼い子どもにとっても、これ以上望めないほどよい機会になったし、リーダーとしての自分を一変させる学びの機会にもなった。

あなたの人生を支える「コミュニティ」の波及効果

2019年5月に私は、インディアナ州ノーター・デイムにある母校セント・メアリーズ大学で卒業スピーチを行うという栄誉にあずかった。どんな話をしようか、と考えたメモを見返してみよう。
大学を出た後の「社会」には、ある神話がつきまとっている。「出世するには利己的でなければならない」「トップに上り詰めたければ、すべての人を蹴り落さなくてはならない」というものだ。これほど真実からかけ離れた神話があるだろうか。プロフェッショナルとしての成功は、ゼロサムゲームではない。
あなたが現在の仲間と育んでいる関係性は、次のステップへと飛び立つ助走台だ。これから生涯を通して続く、「あなたにとって快く成長できるコミュニティの原型」だと思ってほしい。
(蹴落とした相手ではなく)仲間で構成されるあなたのコミュニティは、予測のつかない世界をうまく切り抜け、理解していくうえでの自信の源になるだろう。
今はそれがわからないかもしれない。けれども、現在あなたのそばにいる仲間たちは、大学後に築き上げるコミュニティの手本にもなる。そうした未来のコミュニティは、大学で見つけた仲間たちと同じように、インクルーシブで障害続くものとなるはずだ。
人生の新たなステージに踏み出そうとするとき不安かもしれないが、あなたにはそのための準備ができていることを思い出そう。確固たるあなたの価値観に従って行動し、好奇心を持ち続けよう。あらゆる行動において、共感性と多様性を示す姿勢を示そう。
卒業式は学びの終着点ではない。人生であれキャリアであれ、これ以上学ぶことはない、という時は絶対に来ない。自らのアプローチを再検討し、自分の行動をさらに良いものにする必要がなくなる日は来ないのだ。
卒業生へのスピーチで、私はこう言葉をかけた。
どのような不安を抱えているにせよ、あなたは世界へと一歩を踏み出す準備ができている。その世界は複雑さを増す一方だが、どんなことであれ、学ぼうという意欲を持ち続けてほしい。それ以外に必要なツールはないのだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Kelly Grier、翻訳:遠藤康子/ガリレオ、写真:PeopleImages/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.