次世代電池の「熱戦」を制するのは誰か?

2019/12/16
「プレーヤーが変わってきている」。
リチウムイオン電池の開発により、2019年のノーベル化学賞を受賞した旭化成名誉フェローの吉野彰氏は、2019年夏にNews Picksのインタビューで、電池業界が変革期に入りつつあると話していた。
スマートフォンをはじめ、身の回りのあらゆる電子機器やIoT端末に搭載されているリチウムイオン電池。電気自動車(EV)の普及などで、2020年代はリチウムイオン電池の市場がいっそう拡大すると予測されている。同時に、全固体電池をはじめとする次世代の電池開発も進んでいる。
そうした中、新たなプレーヤーが市場に参入し、業界の姿が大きく変わる。吉野氏は2020年以降の電池業界をそう見ている。

「モバイル化」の功績

1980年代、吉野氏らによって、リチウムイオン電池に適切な材料などが明らかにされていった。こうした研究成果を受け、実用化で世界の先頭を走っていたのは日本のエレクトロニクスメーカーだ。
1991年にソニー・エナジー・テックが世界で初めてリチウムイオン電池を商品化。続いて、三洋電機や松下電器産業(共に現パナソニック)も次々とリチウムイオン電池を世に出していき、ノートパソコンやビデオカメラ、携帯電話などに搭載されていった。
それまで主流だったニッケル水素電池やニカド電池に対し、電圧もエネルギー容量も高いリチウムイオン電池の登場により、ノートパソコンや携帯電話のように、CPUという「頭脳」を搭載した電子機器が、持ち運べる「ポータブル」な存在となった。
世界中の人々のライフスタイルを大きく変えた手のひらサイズの高性能コンピューター、スマホも同電池あってこそ実現した。
こうした実績が評価され、2010年代最後のノーベル化学賞の対象がリチウムイオン電池となった。
(写真:TT News Agency/アフロ)

課題を克服する「全固体電池」