中央銀行が環境問題に手を出すのは無理筋だ
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注目のコメント
一筆させて頂きました。最近、中央銀行界隈、とりわけ欧州においてやたらと環境問題を政策運営に組み込もうという雰囲気が強まっているようです。環境問題の重要性如何ではなく、そこに中央銀行が手を出すということはどういう意味なのかを改めて考察する必要があると思います。ご査収下さい。
唐鎌さんのおっしゃることはよくわかりますが、この流れは止まらないのではないかと思います。
敢えて・・・のコメントですが:
①波及経路については、そもそも「金融政策という手段で気候変動を抑制できるのか」という論点(=気候変動を政策目標にする)ではなく、後半で指摘されているように、気候変動が政策目標に与える影響についてしっかり考える、というのが出発点かと思います。
そのうえで、金融政策だけではない中銀の機能、例えば銀行監督や市場整備において、より気候変動を意識した政策を打ち出していく、ということなのではないでしょうか。
②の中銀がやるべきか、ということについては、非伝統的政策を始めた段階で、すでに中銀の政策の中立性はなく、分配政策に踏み込んだかたちになっていますので、独立性をどう考えるか、ということになります。
ですので、鈴木さんがコメントされているように、独立性の高い中銀はなんでもやらかす、のではなく、実際のところは、政治にすり寄って、政治的に重要だと考えられる問題に取り組んでいるのだと思われます。その点において、これまでマクロ経済学で考えられていた独立性は、新たな段階(言ってしまえば、独立性が低い)に入っているのでは、とも思います。以前に別稿でコメントしたように、中央銀行が関わるとすれば、まずは金融システム安定の切り口からにすべきだと思いますし、その意味で唐鎌氏の議論に基本的に賛成します。
その上で技術的には、気候変動によるストレスをテールイベントと扱うのか、それとも定常的な現象と扱うのかというポイントがあります。普通に考えれば前者ですが、最近の各国の状況を見ていると、後者なのかもしれないとも思えてきます。
本当に後者だとすると、自己資本のようなバッファを備えれば良いということだけでは済まなくなり、官民ともに金融システムを維持するためのコストを恒常的に負担すべきという結論になります。
その意味では、気候変動に関する議論には、それでなくても低収益となっている金融業界がそうした負荷に耐えうるのだろうかという論点もあり、何か異なる仕組みが必要かもしれないと思います。