【独白1万字】ドンが語る。ダイキン、「無敵経営」のすべて

2019/12/9

失われた30年を勝ち続けた

この30年間で、日本の電機産業は敗北を繰り返してきた。
パナソニックも、東芝も、シャープもかつての栄華からは凋落して久しい。だが、その「失われた30年」を一人、勝ち続けてきた企業がある。
ダイキン工業。今年、創業95周年を迎える大阪発の老舗企業だ。
1994年に3800億円だったダイキンの売上高は、2019年度に2.6兆円と、7倍にまで伸びる見込み。空調機器のシェアは「世界トップ」で、海外売上高比率は約8割。日本としては圧倒的なレベルだ。時価総額で見ても、売上高では3倍のパナソニック(約8兆円)に対し、2倍の差をつけて圧勝しているほどだ。
井上氏が社長になる1984時点からこれまでの飛躍。成長は主に海外売上を伸ばすことで実現した。
この圧倒的な成長を実現してきたのが、1994年に社長に就いた井上礼之会長だ。齢84歳、伝説の経営者だ。
創業一族でもない井上氏が社長になるや否や、ダイキンの進撃が始まった。海外M&Aを駆使して欧米事業を伸ばし、アジアでは日本の電機産業にとって、鬼門である韓国メーカーとの頂上決戦を制した。
「衆議独裁」という豪腕でダイキンを引っ張ってきた井上氏。その、経営の極意は一言でいえば、「特別なことはしない」ことにある。GAFAにはない、日本企業の「お手本」がここにある。
NewsPicksは、井上氏に独占インタビューを敢行。25年間を勝ち続けてきた、その経営のすべてを、6つのポイントにまとめながらお届けする。

答えのないところに答えを

──日本企業ではサラリーマン経営者が現状に甘んじたことが凋落の一因として語られます。井上さんもサラリーマン出身の社長ですが、25年間トップ経営者としてダイキンを世界企業へと引き上げられました。
井上 答えのないところに答えを出そうとしてきました。
これだけ時代の変化が速くて、新興国が発展して経済情勢も変わると、過去の経験からは想像できないことが起きてくる。ほかの人が考えても答えが出ないことに対し、答えを求めていくのが経営者トップの仕事やと。
私が25年前に社長になってから、そう思ってやってきました。