[シドニー 5日 ロイター] - オーストラリア連邦統計局が発表した10月の小売売上高は前月比横ばいで、市場予想の0.3%増を下回った。金利引き下げや税還付が消費につながっていないことを示す結果となった。

10月は衣料品や家庭用品、百貨店の売上高がいずれも減少した。

豪準備銀行(中央銀行)は10月初め、6月以降3回目となる利下げを決定し、政策金利を過去最低の0.75%に引き下げた。

政府が実施した大規模な税還付も、消費ではなく貯蓄に回されたもようだ。

ウエストパックのシニアエコノミスト、マシュー・ハッサン氏は「第3・四半期の消費の低迷は第4・四半期の序盤まで続いているもようだ。税還付や利下げによって、2020年6月までの1年間に家計の可処分所得は166億ドル前後増える計算になるが、これらによる押し上げ効果はまだ見られない」と指摘した。

キャピタル・エコノミクスのシニアエコノミスト、マーセル・ティーリアント氏は、10月の小売売上高が横ばいだったことを踏まえると、消費は今後も失望を誘う伸びにとどまる可能性が高いとの見方を示した。また「政府の減税は消費を促しておらず、中銀はおそらく2月に利下げするだろう」と述べた。

金融市場<0#YIB:>は4月までの25ベーシスポイント(bp)の利下げを完全に織り込んでおり、2020年後半までに0.25%まで引き下げられる可能性もあるとみられている。

4日に発表された第3・四半期の豪国内総生産(GDP)は、個人消費の低迷が響いて前期比0.4%の伸びにとどまった。こうした状況は第4・四半期も続きそうだ。

11月の「ブラックフライデー」や「サイバーマンデー」の売上高は比較的良好だったとの指摘もあるが、過去の例を踏まえると、クリスマスの支出の前倒しにすぎない可能性もある。

オーストラリア・アンド・ニュージーランド(ANZ)銀行のエコノミスト、アデレード・ティンブレル氏は、以前に見られたクリスマスの売上高急増は弱まりつつあると指摘。「クリスマスの売り上げを狙った競争の激化を考慮すると、(小売売上高の)早期の安定化は見込めない」と語った。

これとは別に、連邦統計局が発表した10月の貿易収支は黒字幅が45億ドルに縮小した。輸出が5%減少したことが影響した。鉄鉱石、石炭、金の輸出がいずれも減少した。

CBAのエコノミスト、ベリンダ・アレン氏は10月の貿易収支について「巨額の貿易黒字の時代はすでに過去のものかもしれない。10・11月ともにコモディティー相場は下落していた。その結果、今後数カ月の輸出額には下方リスクがある」と語った。

*内容を追加しました。