公開情報からスクープを連発。「オープンソース報道」の時代

2019/12/6

世界中の「謎」を解くネット探偵

リークされた機密文書と内部告発者への取材が調査報道から消えることはない。しかしデジタルテクノロジーの発達に伴いデータが簡単に入手できるようになったことで、調査のあり方はこれまでになく増えた。
「今はコンピューターの前に座ったままで、ミサイルによる民間機撃墜事件の謎が解ける時代です」と言うのは、「BBCアフリカ・アイ」の報道班で活動するアリオム・ルロイ。
ニュースや政府の公式発表、ソーシャルメディアの投稿といった誰でもアクセスできる情報をもとに事件の真相に迫る手法は、「オープンソース・ジャーナリズム」と呼ばれる。
米バージニア州シャーロッツビルで人種差別に反対するグループを襲撃した白人至上主義者の特定に貢献したのも、イギリス南部の町ソールズベリーでロシアの元諜報(ちょうほう)員とその娘を毒殺しようとしたロシア軍諜報機関の職員の素性を明かしたのも、こうしたインターネット探偵たち。
サウジアラビアのジャーナリスト、ジャマル・カショギ殺害事件の容疑者にムハンマド皇太子の側近が含まれていることが明らかになった陰にも、オープンソース・ジャーナリストの活躍があった。
右も左も中道も既存の報道機関を信用しなくなった昨今、加工されていない生のファクトにこだわり、ニュースを直に伝えるオープンソース・ジャーナリズムは人の心に響く。
「このニュースには情報源がありますとBBCが言うとき、情報源の存在は、仲介者であるBBCの背後に隠れて見えません」と、ルロイは説明する。「しかし画像や映像といった物的証拠には、仲介者は必要ない。証拠をそのまま見せることができるのです」
ロンドンのBBC本社(Oli Scarff/Getty Images)

報道の常識を変えた「ゲーマー」