【博士号をとっても無職】幸せや成功を「実力主義」で語る危うさ
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2019/12/17
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皆様に勘違いしていただきたくないのは、大学は教育・研究機関。職業訓練校でも人材紹介業でもありません。これまで世の中で明らかになったことを学問として体系化して教育し、またこれまでわからなかったことを研究で明らかにしていくことが使命だと思っています(ただし、個人的解釈)。
また、学ぶものは特定分野の専門知識という側面もあるでしょうが、自分が興味を持てる特定分野を題材にした問題発見能力、問題解決能力、プレゼン能力だと思っています。むしろ、どの分野でもいつの時代でも必要な汎用的な能力。また、そこで得られる人脈もとても貴重な財産。
例えば、私は画像処理・認識を一応の専門にしています。2012年にDNN (深層学習) が登場し、一瞬にしてそれまでその分野で培われた知見の多くが「過去」のものになってしまいました。それでも物の考え方の根本は変わりません。なので、使う道具が過去の解析的アプローチからデータドリブンなアプローチになっただけという認識です。逆に言うと、いまDNNだけを妄信的に、しかも原理を理解せずただ使いこなすだけに邁進しているとそのうち「そんな能力いらない」と言われる日が来る可能性すらあります。
この記事を書かれた方がどのような就職活動をされたのか存じ上げませんが、私の周りで活躍する博士は自分の専門分野にはこだわらず、けれども博士での研究生活で得た「実力」を他分野でも発揮できる方々。最近特に多いなと思うのが物理学で博士をおさめてAIの分野で活躍する方々。数学的な思考がとてもよくマッチするのだと思います。活躍の場は物理学でなくてもいい。
(ここでは一例として紹介しているだけで、物理学について云々ではないです。あしからず。)専門にもよると思います。筆者は国際関係学で博士号を取得されたようですが、これがComputer Scienceだったら状況は異なっていたかもしれません。
どのような専門でもずば抜けていれば引く手数多ですが、そうでない場合にはマーケティング力(自分の需要がどこにあるか分析する力、ないようなら市場を開拓するような気概)、コミュニケーション力(自分を表現する力)が合わせて必要です。日本では肌感覚沸きにくいと思いますが、アメリカでアイビーリーグ大学を卒後に新卒就職した会社から1年未満でリストラにあった身としては、これは本当のアメリカで生きる事の怖さとして感じます。
アメリカの資本主義の根元には競争原理主義があり、
そこには個人の経済格差が生まれる余地が多分にあります。
平等なのはチャンスだけ。その後の個人の成功についてはもちろん「スキル」や「努力」も重要ですが、「運」「競争」「お金に対する執着心」などの方がより影響を及ぼす社会構造になっている気がしています。人生の全ての曲面において、色んな意味で「市場性」が問われる、そんな社会のあり方の是非と幸せの定義について、個人的な知り合いもたくさんいる中で、個人的にもよく考えさせられて来ました。
アメリカは、もしかして今世界で一番不幸せな国なのかも知れません。