英語の不安を自信に変える。「伝わる英語」は技術で手に入れろ

2019/11/29
実践の場で使える英語力を最短距離で鍛える「English for Everyone」。今年1月、English for Everyone代表の是枝秀治氏と対談を行い、そのメソッドを実際に体験したのがシニフィアンの朝倉祐介氏だ。実は、朝倉氏はその後、English for Everyoneに入会。約9カ月にわたり同社独自のトレーニングを継続し、英語力に磨きをかけているという。

「朝倉さんの英語は別人のように変わった。今なら、CNNやBBCでも堂々とインタビューに答えられる」と是枝氏が太鼓判を押すほどの変化が現れたという朝倉氏に、ビジネスで「伝わる英語力」の重要性とともに、英語を学び続けて得たものについて語ってもらった。

「住所が伝わらない」現実に愕然

朝倉 英語の会話、とくに発音については、もともと課題意識がありました。
 それを身にしみて感じたのは、スタンフォード大学の客員研究員として2年ほど滞在したアメリカでの日々です。
 大学での講義やディスカッションは最低限こなすことはできましたが、その一方で、語彙レベルでは簡単な単語が思いがけず伝わらないことがありました。現地で暮らせば暮らすほど、「自分はまったく英語で言いたいことを伝えられないな」と思い知らされることが多かった。
 たとえば、僕は「Portola Valley」というところに住んでいたんですが、これが通じない。“ポルトラバレー”と何度言っても聞き返される。自分が住んでいるところさえ相手に伝えられないって、結構ショックが大きいですよね。
 ほかにも、ごくごく簡単な単語を聞き返されることが少なくなかった。語彙の難しさや文法の複雑さとは関係なく、発音がなかなか伝わらない。「なんなんだ、これは」という感じ。
 これまで文法や長文読解はひと通り学んできました。TOEFLならビジネススクールに合格する程度の点は取れますし、GMATでネイティブの受験生よりもよほど高得点を取ることもできた。また、実際に英語で業務も行っていました。
 でも、ペーパーテストのスコアでは十分な英語力があるという客観的評価と、英語の会話力に対する自己評価の間に大きな乖離が生まれていく一方で。これは完全に別物なんじゃないかと思うようになりました。
 帰国以降も、頭の片隅にはいつも「英語をなんとかしなくては」という課題感が引っかかっていたんです。

「発声」から英語を鍛える

 ちょうどそんなとき、NewsPicksの対談でEnglish for Everyone(以下、E4E)のメソッドを知りました。タイミングがよかったんですね。
 英語の「音声」に特化した反復練習、たとえていうなら“野球の素振り”のようなことをしたいと思っていた僕のニーズにぴったり合うメソッドだった。
 ある程度、英語の知識はあっても「話したいことがきちんと相手に伝わらない」とフラストレーションを抱えている僕みたいな人には、とくにピタッとハマる学習法だと思います。
 E4Eでは、週に1度の対面レッスンに加え、毎日の宿題として単語や文章を録音した音声を送り、ネイティブからフィードバックをもらい修正を繰り返します。
 最初のレッスンで驚いたのは、思ってもみなかった指摘を受けることでした。
 たとえば、「もっとアゴを引いて、胸を震わすように声を出してください」とか。「それって、英語にどんな関係があるわけ?」と思っちゃいますよね(笑)。
 発音には課題意識を持ちつつも、海外での就業や生活経験もあるし「それなりに英会話はできる」という自負がある状態で、E4Eに英語を学びに行ったら「まず呼吸法が違う」と、まったく想定外のことを言われるわけです。
 でも、言われるがままに喉を開いて声のトーンを落とし、息を必要量確保しながら話してみると、たしかに聞こえ方が如実に変わってくる。
 そういえば、仲のいいアメリカの友人や帰国子女の人って、声が響いていてびっくりするくらい低い声で話すなと、合点がいきました。
 そこから声のピッチ(高さ)を低くすることは相当意識するようになりました。僕はもともと声が高いので、日本語で話すときも発声法を変えるように意識してみたり。
 受講当初と今の音声を聞き比べると、自分でも驚くほど声の高さが違うし、英語で話す際の聞き取りやすさも変わったことを実感します。

中学レベルの単語も伝わっていなかった

 E4Eでは、自分の英語の音声が「合っている、合っていない」とはっきり指摘してもらえることも、目から鱗が落ちる体験でした。
 自分では正しく発音したつもりでも、「ネイティブにはこう聞こえていますよ」と言われるんです。まったく意図していない聞こえ方をしていたことが明確にわかるから、修正もしやすい。
 レッスン開始時からやっていることは、ほとんどが中学英語レベルの単語や文章の音読です。
 日本人が発音しづらい単語を中心に、ひたすら発音して反復練習しながら、顔の筋肉を鍛え、体で英語を覚えていく。
 たとえば、year、your、Japan……。小学生でも知っているようなレベルの単語ばかりを目にし、最初は「マジか!」と思いましたよ(笑)。
 でも、語彙レベルで初歩的な単語だからといって、発音も簡単というわけではありません。
 自分の音声に対してフィードバックを受けると、相手には明らかに違って聞こえていたことに気づく。よく言われるようにRやL、theなどの発音は意識しないと本当に難しい。
 こんな簡単な単語ですら、自分は言えないということが本当に悔しかった。これがレッスンを続けてきたひとつのモチベーションです。

反復練習を繰り返す中で成長の実感も

 単語レベルの発音に加えて、文章で英語を話すときのリズムや強勢の付け方も教わりました。
 学校教育では体系立って習ってこなかったことですが、これらをマスターできないと「伝わる英語」にならないと思い知った。
 そして、この伝わる英語の話し方を体に染み込ませるために、とにかく毎日練習を繰り返す。
 英会話のレッスンというよりはジムで体を鍛えているような感覚で、トレーナーに「背筋のこの部分に効かせることを意識して」と言われているイメージに近いかもしれません。
 教材は数カ月間ずっと同じ数枚のプリントだから、ほんとに地味ですよ(笑)。でも、これは定着させることにこだわっているからだと思います。
 この地道なやり方が僕の性には合っていたし、「1回目に指摘されたことを、2回目には言われなくなった、よしよし」と小さな達成感を積み重ねて、自分なりに進歩をしっかりと感じられる点もおもしろいポイントでした。

「伝わる英語」かどうかは死活問題

 実践的な英語力を鍛えるためには、こういった英語の技術を訓練するより「カタコトでもいいから、とにかく現場で多く話し、習うよりも慣れることが大事」という声もあります。
 たしかにそれも一理あると思います。僕自身も15歳で単身オーストラリアに渡り、騎手養成学校に通った当時は、中学生レベルの英語力でも調教師との意思疎通に困ることはほぼありませんでした。
 ちょっとした日常会話や海外旅行での英語、ビジネスであっても同じ組織内の簡単な業務のやりとり程度であれば、カタカナ英語で十分かもしれません。発音を気にして口ごもっているくらいなら、とりあえず話してみる方がよほどいい。
 ただ、会話内容の複雑さが増したり、背景や知識を共有していない状況で能動的に相手を理解、納得させたりしなければいけない場合だと、なかなかそうもいきません。
 今、僕は欧米の投資家に英語で説明する機会も少なくありませんが、そんな場面で相手に「聞きづらい英語だ」と思われることは、かなりハンデです。
 日本の経済力が弱くなった今、一昔前に比べて彼らは日本のマーケットに対して魅力を感じにくい状態。ましてや、これが日本の新興企業のようなニッチな話題になると、ほぼ前提知識もなく、中国や東南アジアの国々に行ったついでに、観光がてらちょっと日本にも寄って話を聞いてみようかな、という程度の気分でやって来る人も中にはいます。
 相手がこちらに興味や関心がない状態から、自分たちの魅力を伝えるためには、「伝わる英語」かどうかは最低限の土台であり、死活問題です。
 逆の立場に置き換えたらわかりますよね。
 カタコトの日本語で話をされても、最初の30秒ぐらいは一生懸命、何を言っているのか聞こうと思うかもしれませんが、途中でプツリと集中が切れてしまう。
 ビジネスの場面では、そんなふうに背景や前提知識を共有していない相手、そもそも自分たちへの関心が高くない相手になんとかして伝え、納得してもらわなければいけない局面が往々にしてあります。
 仕事の内容次第ではあるのでしょうが、「伝わる英語」を最低限の道具として身につけることは必要だと思います

E4Eで身につけた「新たな英語人格」

 もちろん僕自身、自分の英語力はまだまだ発展途上ですが、E4Eで学習したことで、どういう音やリズムを使えば英語がもっとも効率的に伝わりやすいのか、勘所は掴めてきた気がします。
 僕が今、英語を話すときは低く響かせた声で、短いセンテンスをゆっくり話すように心がけています。日本語で話すときとは真逆の“別人格”ですね。
 実際、以前であれば何度か聞き返されただろうというやりとりも、スムーズにディスカッションできるようになった実感があります。
 また、話す力だけでなく、聞くこともスムーズになりました。正しい音やリズムを知ることで、単語に含まれるAの発音を自然と聞き分けられたり、知らない単語でも聞いただけでスペルがパッと頭に思い浮かぶので、その意味を推測できたり。
 僕の場合はレッスンを続けてきて、どこかのタイミングで劇的なブレイクスルーがあったというよりは、練習を繰り返す中で、英語で正しく伝える技術が着実に積み上がってきたというのが正直な感想です。
 ただ9カ月前のタイミングと今を比べてみると、変化は如実。ずっと自分のなかで引っかかっていた「伝わる英語」と向き合う時間をとったことは、本当によかったと思っています。
(取材・編集:樫本倫子 写真:竹井俊晴 デザイン:月森恭助)