[ワシントン 27日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は27日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済が10月から11月中旬にかけて緩やかに拡大したとの認識を示した。成長見通しはおおむね明るく、労働市場は全国的に引き続き逼迫しているほか、物価は小幅なペースで上昇したと指摘した。

ベージュブックは「経済見通しは引き続きおおむね明るい。一部の調査先は現在の成長ペースが来年も続くとの見方を示した」とした。

複数の地区は専門・技術サービスとヘルスケアの部門で「雇用が比較的好調に伸びた」と報告した。製造業はまちまちの内容だった。いくつかの地区が雇用の伸びを報告する一方、変わらなかったとする地区もあった。1地区は解雇が見られたと報告した。

全国的に労働市場が逼迫する中で雇用主は適切な人材を見つけることに苦戦しているが、雇用は全体としては伸び続けた。いくつかの調査先は欠員を埋められないため事業の伸びが抑制されていると報告した。例えば、ニューヨーク地区の人材紹介会社2社は「大半の候補者が」既に職に就いており、この時期に転職する興味を示していないと述べた。

農業の状況はほぼ変わらなかった。気候のほか、農作物価格が低いことが引き続き抑制要因となっている。リッチモンド地区は農家が用地や機器の投資をためらっていると報告。アトランタ地区の一部は日照り続きの状況だったという。

16カ月目に入った米中貿易摩擦は景気の重しとなっている。関税を巡る先行き不透明感から企業は決断を先送りしており、製造業活動の弱含みと設備投資の低迷につながった。

小売業者はコストの増加を報告。いくつかの地区は関税の引き上げが要因だと指摘した。一部の企業は価格の引き上げに限界があるとする一方、コスト増加を転嫁しやすい企業もあった。

個人消費についてはほとんどの地区が安定的もしくは緩やかに伸びたとした。複数の地区は自動車の売り上げと観光が伸びたと報告した。

産業のところどころに弱含みがあると報告する地区もあった。セントルイス地区の小売業者は、悲観的な景気見通しになったほか、売り上げは昨年と比べて同じか小幅に減ったとした。ニューヨークのブロードウェイの客数は11月の前半に減少し、チケット価格は1年前からわずかに値下がりした。

米中貿易摩擦や世界経済の鈍化、設備投資の落ち込みから米経済を守るためにFRBは今年3回利下げを実施。

11月の消費者信頼感は、4カ月連続で低下した。現況指数が重しだった。ただ依然として、緩やかな経済成長を示す水準にある。

パウエルFRB議長は25日、金融政策は力強い労働市場を支援し2%の物価目標を達成するのに適した状態にあるとの見解を示した。景気見通しが大幅に悪化しない限り金利を据え置くことを示唆する発言だ。

そのほか、いくつかの地区は人手不足によって外食産業が特に抑制されていると報告した。カリフォルニア州南部では人件費と経費を理由に廃業したレストランもあった。ミネアポリス地区では一部レストランが人員不足を理由に営業時間を短縮した。

今回の報告は11月18日までに入手された情報に基づき、ダラス地区連銀がまとめた。