[神戸市 27日 ロイター] - 日銀の桜井真審議委員は27日午前、兵庫県金融経済懇談会であいさつし、海外経済の減速が一段と強まり、日本の実体経済への悪影響が顕在化した場合には、悪影響の規模とその波及スピードを見極めた上で政策対応すべきだと述べた。海外経済の減速が緩やかな場合は日本経済への波及も緩やかになり、経済指標を分析した上で対応を検討する余地が生まれると話し、「拙速な政策対応を控えるべきだ」と語った。

桜井審議委員は海外経済について「今後一段と減速が進む懸念が残るが、各国の景気対策の効果が2020年前半に想定以上に出てくる可能性がある」と指摘。世界経済の緩やかな回復への転換が2020年半ば頃までは想定しがたいため、向こう約半年間は国内景気の動向を慎重に情勢を点検すべきだとした。

桜井委員は、政策の効果と金融緩和継続に伴う副作用のバランスを慎重に考慮しつつ、粘り強く金融緩和を続けることが肝要だと述べた。その上で、1)世界経済の減速と日本の実体経済への影響、2)金融緩和の継続による効果と副作用、3)経済構造・物価変動メカニズムの変化――の3点に留意すべきだとした。

桜井委員は「仮にリーマン・ショックのように金融システム崩壊の可能性を伴う危機の場合には、果断な政策対応が必要になる」と指摘する一方、「貿易問題による海外経済の減速が緩やかな場合、経済指標の動向を見て政策対応する余地が出てくる」とも述べた。

また、「低金利政策の継続に伴う金融システム面での副作用に留意する必要性が一段と高まっている」と指摘。地域金融機関を中心に自己資本比率が低下トレンドをたどっており、従来以上に細かなモニタリングが必要な状況になっているとも述べた。

省力化投資に伴う労働生産性の向上が物価上昇を抑制するなど、金融政策と物価の関係が複雑化していることも指摘した。

<ポリシーミックスの意義>

桜井審議委員はポリシーミックスの意義について、「日本経済の構造変化を支え、金融市場の変動を抑制するアンカーとしての役割を果たしている」と述べた。「国内でのポリシーミックスとグローバルな金融緩和環境が維持されるもと、世界経済の回復局面を辛抱強く待つことで、プラスの需給ギャップの持続と変化し始めた経済構造を支えることが重要な政策課題だ」と述べた。

物価については「7年に及ぶ大規模金融緩和の継続で、実体経済に関連する多くの指標が改善し、物価もデフレではない状況になった」と指摘。ただ、「海外経済の減速が想定を超えて継続し、需給ギャップがマイナスに逆戻りすれば、再びデフレに直面するおそれも出てくる」とし、「慎重に海外経済やわが国経済の先行き動向を点検しつつ、さらなる政策対応が必要な場合に備えた準備は怠るべきではない」と述べた。

*内容を追加しました。

(和田崇彦 編集:内田慎一)