【ドキュメント】日本のiPS細胞は、なぜガラパゴス化したのか?

2019/11/25

山中教授の「叫び」の裏側

山中伸弥。2012年にノーベル医学生理学賞を受賞した、史上2人目の日本人だ。
その真面目な人柄や、マラソンを走っては寄付を集める姿は広く知られ、まさしく「国民的英雄」の一人である。
その山中が「理不尽だ」と何かを訴えれば、国民のほとんどが信じて疑わないだろう。
例えば、国が研究支援を打ち切るのは理不尽だと主張すれば、なぜ政府は、国の宝である山中さんを見限るのか──と。
「いきなり国の支援がゼロになるのが本当だとしたら、相当理不尽だ」
2019年11月11日、日本記者クラブの記者会見。京都大学iPS細胞研究所の山中所長は、記者たちを前にそう訴えた。
2019年11月11日、記者会見で支援を訴えた山中伸弥氏(写真:つのだよしお/アフロ)
山中の心中には、「国にはしごを外された」という憤りがあったのかもしれない。
何しろ、文部科学省とともにつくったiPS研の「主力事業」であるはずの、iPS細胞バンク(現iPS細胞ストック事業)への公的支援を、突如打ち切る、というのだ。
「透明性の高い議論で決定していただけたのか、理由もよく分からない」(山中氏)
ところが、である。
その深層に迫っていくと、イメージとは180度異なる景色が見えてくる。本当は山中は、支援がここにきて打ち切りになる理由を、よく分かっていたのではないだろうか。