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香港人権法案、米下院が可決 トランプ大統領署名の見通し

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  • 笹川平和財団 上席研究員

    米国が中国に圧力をかけることは、香港の抗議活動が目的としたとおりの結果であると言えます。中国は、不快感を持つばかりでなく、警戒を強めるでしょう。しかし、中国は、香港の管理強化を緩めることはありません。
    米国がけん制すればするほど、中国は反発し警戒を強めて、より強硬に香港を抑え込もうとすると考えられます。米国も中国も、実際に戦争をする気はなく、「政治戦」を戦っています。
    「政治戦=ポリティカル・ウォーフェアー」は、古くから米国で使用されている言葉です。1950年代、米国の外交官であり国際政治学者でもあったジョージ・ケナンが、米ソ冷戦を迎え、改めて「政治戦」を持ち出し、それ以降の米国では使用されます。「直接の戦闘に至らない軍事力の使用を含む、あらゆる手段(経済も含みます)を攻撃的に使用する」戦いは、日本人が「政治戦」という文字から受ける印象とはかけ離れたものかもしれません。
    香港の抗議活動が望んだとおり、米国が中国に圧力をかけているとしても、実際には、香港問題が米中政治戦のカードの一枚になっている可能性もあります。中国は、簡単に武装警察を投入しません。その代わり、香港警察に、より苛烈な弾圧を行わせるでしょう。
    すでに、香港には新疆ウイグル自治区にある強制収容所と同様の施設が建設される予定で、その施設は香港警察の「対テロ訓練場」に隣接しているといいます。香港警察は、香港内の事案しか扱わないのですから、香港政府は香港内に「テロ」があると認識していることを示しています。もちろん、その認識は、中国共産党の認識に従うものです。
    2016年7月には新疆兵団監獄管理局が香港警察を訪れており、2018年末には香港保安局副局長率いる代表団が新疆を視察しています。
    中国共産党は、以前から、香港をどのように管理するか計画していたのだとも言えます。中国共産党が香港を自由にさせておくことはありません。中国共産党の「領導」の下にしっかりと組み込もうとするのです。
    問題は、中国がさらに強硬に香港の民主主義を求める抗議活動を抑え込んだ時、米国が実力行使するか、ということです。残念ながら、トランプ大統領が実力行使に踏み切る可能性は極めて低いと考えられます。そして、中国共産党が米国の限界を見切ったと考えてしまったら、新疆ウイグルの状況も改善されず、同様のことが台湾においても将来起こる可能性があります。


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