【本田圭佑 #1】挑戦を続ける原動力。胸に秘める“HOPE”とは

2019/11/19
 本田圭佑を表す言葉は、「挑戦」と「成長」の二語に集約される。
 世界的なサッカー選手でありながら、現役中にクラブ経営に進出し、指導者としてカンボジア代表監督にも就任。
 さらにビジネスにおいても、自らスタートアップを創業し新規事業を手掛けながら、投資家としてファンドに関わるなど、さまざまな領域に進出している。
 なぜ己の限界を超えようとし続けるのか。挑戦をし続けるのか。
 様々な分野でチャレンジを続ける本田圭佑の原動力、そして胸に秘める「HOPE」とは何かを明らかにする。

すべては「悔いのない生き方」のために

──教育や投資など、さまざまな領域に進出している本田さんの行動の「核」にあるものを伺わせてください。
本田 …………一言でいえば、“人間はそのうち死ぬ”ということ。僕がサッカー選手の枠組みを超えてチャレンジをしているのも、「時間は有限である」という事実が常に頭の片隅にあるからです。
 ただし、サッカーで世界一を目指していたときは、そうじゃなかった。
 子どもの頃、父親の影響でサッカーを始めて、それが想像以上に面白くて。「これで成功したら親孝行できるな」という思いがあって、ワールドカップで優勝することを目標に続けてきて。
 「サッカーで成功を手にしたい」とか「家族を幸せにしたい」とか、そういうことしか考えていなかった。
──あくまでもひとりの選手だった。しかし、現在の本田選手の思考・行動のスケールは、とても大きくなっています。
 いくつか理由はあって。その中でも大きかったのは、サッカーの代表選手としてアジアやアフリカの貧しい国に行ったことですね。
 そこで、背中に兄妹を背負った子どもたちが物乞いをしている光景を目の当たりにして、価値観を大きく揺さぶられたんです。
 僕が子どものころは、サッカーの大きな夢を目指しているだけで、他人を幸せにしたいなんて考えたこともなかったんですよ。
 でも、貧困層の子どもたちを見て、「人生とは何か」と深く考えさせられましたし、いろいろな経験をする過程で、世界にはさまざまな境遇の人がいることを知った。そこで僕は、「見てみぬふりはできない」と思ったわけです。
──社会の「痛み」に気がついたとき、そこに関わろうと決めた。
 たまたまサッカーをしていたおかげで、世界中でいろんな光景が見れた。ほとんどの日本人が見たことのないものを目の当たりにする機会があった。
 そこで自分の人生を考えた時に、僕は根本的なところで時間軸との関係で意思決定をしているので、悔いを残したくないと思ったんです。
──悔いを残さないために、どんなことに取り組もうと思ったのですか。
 僕は子どもに感情移入するんです。世界には、まだまだ自分の夢を追えない環境にいる子がたくさんいるんですよ。サッカーを続けたいのに続けられない子だっている。
 だから、自分の余分なエネルギーを全部そこに投入していこうと決心して。それが、僕の後悔しない生き方のひとつです。
 カンボジア代表の監督兼ゼネラルマネージャーをしているのも、投資家として新しいビジネスに投資しているのも、世界中にサッカースクールを拡げているのも、「可能性を奪われている子どもたちに何かできないか」という思いからスタートしています。
──そして今、誰も足を踏み入れたことのない道を歩いています。
 たとえばサッカーだけとか、ひとつのことに集中した方がパフォーマンスを高められるという考え方も理解できるけど、そのやり方は自分の生きたい道じゃないと思う。僕のような人間がいるのも事実で。
 確かに、取捨選択が上手くできなかった時にパフォーマンスが高まらなかったこともあるし、否定されることもある。
 でも、僕が大切にしているのは「時間には限りがある」という概念。なので、他人にどう言われようと関係ない。
 もちろん、全部やれているわけではないけれど、理想として描いているイメージはたくさんある。それにマッチする仲間と巡り合うタイミングで、「行動」しているのかもしれません。
11月19日に創刊した『HOPE by NewsPicks』は、「若者の未来に、希望を。」というメッセージのもと、学生が自らの意志で「生き方」を考え、行動するきっかけを創るメディアです。詳細は下記のリンクをご参照ください。
(取材・編集:呉 琢磨 構成:吉田勉 撮影:Atsuko Tanaka デザイン:月森恭助)