就活に大失敗した私が、あの頃の自分にアドバイスをするなら

2019/11/22
1994年2月生まれ。国際基督教大学卒業後、アパレル企業TOKYO BASEを経て2017年にCAMPFIRE参画。ソーシャルグッドに特化したクラウドファンディングサービス『GoodMorning by CAMPFIRE』の立ち上げに携わり、2018年1月より事業責任者に就任。2019年4月、GoodMorningの事業分社化に伴い代表取締役社長に就任。
 2019年4月、25歳という異例の若さで代表取締役社長に就任した酒向萌実さん。株式会社CAMPFIREに就職し、そこから社会問題特化型クラウドファンディングサービスを運営する同子会社・GoodMorningを率いることになった。
 そんな彼女のキャリアをひもといてみると、実は最初の就職活動に失敗したそう。
「就活は大失敗」
「誰にも相談できなかった」
「友達ともギスギス……」
 など、現在に至るまでには、悩み、失敗し、躓く瞬間があった。彼女自身が社会人として成長する中で、人生の岐路に立った時にどのような「決断」を下していったのだろうか。就活時代から現職に至るまでのヒストリーを伺った。
目標、職業、働き方、生き方……決断の連続の中で、意思を問われるビジネスライフ。決して思い通りにいくことばかりではない社会生活の中で、自分の想いや考えで働き方を選び、開かれた生き方を歩む人たちから学ぶ“開かれたキャリア論”を、「働くのすべてを、オープンに」を掲げるOpenWorkの提供でお届けします。
「好き」を仕事にすべきと信じていた就活時代
──まず酒向さんの就活生時代のお話を聞かせてください。どういった職種を選んで就職したんですか?
酒向萌実 実は今だから言えるんですが、私、就活は大失敗してるんですよ。ほぼ全落ち(笑)。大手出版社も引っかからなかったし、伊勢丹も最終面接で落ちました。
──意外です。今考えるとなぜだと思いますか?
「とりあえずサラリーマンになる」というざっくりした方針しかなかったですし、そもそも働く意欲がありませんでした。世の中にどんな仕事があるのかもわからなかったし、自分が何をやりたいかが全然わからなかったのが、失敗した主な原因だったのかなと思います。
──それで、アパレルのスタートアップ企業に入ったと。
 はい。世の中からすり込まれている「好きなものを仕事にしたほうがいい」っていう価値観が強かったので、倍率の高い出版社やアパレルを中心に受けていました。
 なんとなく長く勤めるイメージも湧かないし、とりあえず下積み期間もそこまで長くないところに入ろうと思って、結果的に新卒時代はアパレル系のスタートアップ企業に入社したんです。
──当時は今取り組まれているような、社会問題を解決するような事業は思い浮かばなかったんですか?
 大学時代から沖縄の基地問題とかを研究したり、NPOのボランティアをしたりとか、社会問題には興味を持っていたんですが、それと仕事は全然結びつきませんでした。それでどうやって働くのかなというのがまったくイメージできなかった。
 あ、もうひとつ、失敗の原因と言えば、当時、誰にも相談できなかったんですよね。今思えば、その時、世の中にどんな仕事があるかを社会人の友達に聞けばよかったのに、聞きに行かなかった。すごく後悔しています。
 多分、大学時代からいろんな会社でインターンをしているわりに、自分の中で仕事のイメージが実はついていないことに引け目があったんですよね。自分の考えが足りていないことを正直に認められなかったからこそ、自信がなくて人に相談ができなかった。
 あと、みんなが一斉に就活生になる空気が怖かったのもありました。就活が本格化するにつれて、内定取るまでは連絡取るのやめようとか言って、友達ともギスギスしちゃって……。未だにその頃の友達と会うと、あの頃、肩肘張ってバカみたいだったね、なんて話になりますよ(笑)。
 それまではそれぞれ好きなことをやったり、それぞれの評価軸で生きていたのに、その瞬間だけ同じ軸で動いていくことがすごく怖かった。自分ではコントロールできない仕組みに組み入れられて、どうしようもなかったんだと思います。
お客さんに言われた一言で泣いてしまった
──実際に入社して働いてみた感想はいかがでしたか?
 失敗したなんて失礼な言い方でしたけど、上司がすごく面倒見のいい人で朝から夜までつきっきりで指導してくれたんです。店舗の営業職だったので販売報告に対し詰められることもありましたが、やればやるほど数字が積み上がっていくのはおもしろかった。
 短い期間ですけど、かなり鍛えてもらいました。働くことへの恐怖心はなくなったし、必要なスキルは自分の力で努力して身につけなければいけない、ということも学びました。
 ただ、育ててもらえる良い環境だったのに、当時の私は他人と自分を常に比べていて、仕事に打ち込めませんでした。その当時、私のまわりの同級生は、広告代理店とか大企業とかのオフィスワーカーばかりでした。
 まわりの子は自分がやりたいことをわかった上で楽しく仕事をしているように見えて、私は何がやりたいのかもわからないまま、時間を無駄にしているような気分。
──そんなモヤモヤを抱える中で、転職を決意したきっかけは?
 ある時に接客していたお客さんが、スープストックトーキョーで働いている人だったんです。ちょうど同い年ぐらいで、店舗勤め、立ち仕事が中心の人だった。
 彼女とは「自分たちだけ平日休みで、立ち仕事なの、なんか辛いですよね」って話をしたりして、意気投合していたのですが、ふと「でも、私はスープストックの未来を信じているんだよね」って言われて。
 その瞬間に泣き崩れそうになりました。その時の私は、「自分の会社の未来、信じている」って言えなかったから。スープストックもその人もすごいな、って。
 お客さんの前で半泣きになりながら、「辞めたほうがいいな、もう」と思ってしまって。本当にその日のうちに「すいません、辞めます」って店長に伝えました。
──転職先を決める前に退職願を出したんですね!
 そうなんですよ! 新卒の11月かな。年末で辞めますっていう話をして。勢いで辞める宣言をしてから、自分の中での決断力は一気に強くなりました。完全に背水の陣ですね、あまりおすすめできません(笑)。
 そのスープストックのお姉さんがいたから今の自分がいます。どこかで彼女にまた胸を張って会えるようにって思って頑張ってきたところがあるので。会いたいし、今でも探しています(笑)。
 それで、「次は何をすべきか」を考えたときに、一周回って「社会問題」に行き着きました。実はアパレルの仕事で一番おもしろく感じたのは、「障害者差別解消法」をベースとした研修だったんです。どんな人にも同じサービスを提供するのではなく、誰でも同じくサービスを受けられるようにするためのソリューションを考える、という研修でした。
 それを思い出して、社会において不利な立場に陥ってしまう人をフォローするような仕事や、社会問題を解決する仕事がやりたい、ということを何となく感じつつ、仕事を探していたら、たまたまクラウドファンディングに行き当たりました。大学の時に一番興味を持っていたことが、仕事にやっと結びついたんです。
──新卒時代の就活と比べ、転職活動ではどういった変化がありましたか?
 とにかくすぐにいろんな人に相談しまくりました。何となく知り合いの、相談に乗ってくれそうな10個ぐらい年上の社会人とかに事情を説明して、お茶、付き合ってください、って連絡して。
 あとは、クラウンドファンディングかなと思ったら、「クラウドファンディングの会社で働いている友達いる?」って、何人かに連絡をして、紹介してもらって、3人ぐらいに会って話を聞きました。
 何より、社会に出るスタートを失敗し、その失敗を認められたことが大きかった。今でも就活を頑張り切れなかった自分を励ますために、今の仕事を頑張っているところはあります。だから、振り返ってみると苦しかった就活・新卒時代は、自分にとって必ずしもネガティブな期間ではないんです。
自分の力だけで解決できることは少ない
──現在の社長というポジションに立つことで身についたスキルはありますか?
 うーん、「自分にしかできない仕事」というのはあんまりないですね。でも得意なのはいろんな人に聞きに行くこと。手伝ってもらうのが得意なんですよね。今でもいろんな人に相談させてもらいながらGoodMorningの事業を拡大させ、クラウドファンディングで実現できる未来の可能性を広げようとしています。
──その特技はどうやって身についたのでしょう?
 就活時代の失敗や、新卒時代の経験、そして現職に就いてからの積み重ねの中で徐々に、ですかね。自分だけで解決できることが結構少ないことに気づいて、すぐ誰かに相談することの重要さを知りました。
 今も新しいトラブルに直面したら、まずはそのトラブルにもうぶつかっていそうな人に話を聞きに行くことにしています。そうすると、答えは誰も教えてくれないけど大体みんなその壁を乗り越えているんです。結構落ち着いて考えられるようになりますよ。
──就活生時代の酒向さんとは正反対ですね(笑)。
 そうでしょう!(笑) だから、もし就活生だった頃の自分と話ができるのなら「自分だけで答えは出せないから、誰かのところに聞きに行きなさい」と言ってあげたい。そして、就活中も友達同士は敵じゃないんだから、喧嘩せずにもうちょっと情報を共有したり、一緒に戦いなよと。転職という選択肢があることもちゃんと伝えたいですし。
──ちなみに、人に相談しても判断が難しいような決断を迫られた時はどうしますか?
 そうですね……とにかくメリットとデメリットを紙に書くんです。実際、自分自身が社長を引き受けるかどうかを決めるときは、メリット・デメリットを100個書きだして比較検討をしました。社長になったら、Tinderとかやりづらくなるなとか(笑)。
 最終的にそれで判断がつかないこともあります。でもここまで書きだして、もうあとは自分の最後の決断を信じよう、って思えるところまで考えると、仮にその選択が間違っていたとしても後悔はしないんです。
 むしろ「人がこう言ったから」という理由で決めた判断ほど後悔するんじゃないかな。私は最初の就職のときにも、どこかで親への言い訳を考えながら、納得できずに就職したところがありました。
 まわりに相談しつつも「あの人が言ったからこうする」っていう選択は絶対しない。それだけは自分にルールを課しています。「全部自分で決めた」って最後に思えることがすごく大事だなって思います。
(編集:中島洋一 構成:高木望 撮影:渡邊有紀 デザイン:月森恭助)