[ローマ 15日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーのビスコ・イタリア中銀総裁は15日、ユーロ圏の救済基金である欧州安定メカニズム(ESM)の改革に向けた動きが出ていることについて、改革による損失は恩恵を上回る恐れがあるとして警戒感を示した。

ESMについては欧州版の国際通貨基金(IMF)である「欧州通貨基金(EMF)」に改編する案が出ており、改編された場合、金融危機に陥った国の救済に債務再編などが義務付けられる。

イタリアはこうした案に反対。ビスコ総裁はローマで行った講演で「債務再編で得られる恩恵は小さく、かつ不確実性が高い。こうした恩恵は、債務再編を宣言するだけで自己増殖的なデフォルト(債務不履行)懸念が台頭する著しいリスクと照らし合わせて考える必要がある」とし、「慎重な対応が必要だ」と述べた。

その上で、ユーロ加盟国は公的債務削減に向けた支援が必要で、そのためには「ある種の超国家的な保険」が必要とし、関係国が資金を拠出する欧州債務償還基金のような機構の設立を提案した。

ビスコ総裁はこのほか、ユーロ圏のインフレ率押し上げに向け各国による一段と拡張的な財政政策導入の重要性を強調。ECBは9月の理事会で資産買い入れ策の再開などを含む包括的な緩和策を決定したが、各国政府は役割を一段と拡大させる必要があるとの考えを示し、「金融政策は単独ではいわゆる非伝統的な措置を継続する以外のことはできない。これにより(非伝統的な措置による)副作用のリスクが高まる」と語った。

また、ユーロ圏の経済統合加速化の必要性にも触れ、単一通貨ユーロを「単一の財政政策と連携させる必要がある」と述べた。