[クアラルンプール 15日 ロイター] - マレーシア中央銀行が発表した第3・四半期の国内総生産(GDP)は前年比4.4%増だった。輸出や鉱業部門の不振で1年ぶりの低成長となり、来年初めの金融緩和観測が高まった。

第3・四半期GDP伸び率は、ロイターがまとめた市場予想とは一致したものの、第2・四半期の前年比4.9%増から伸びが鈍化した。

GDPを構成する全セクターが減速ないし減少。第2・四半期に2.9%増加していた鉱業は4.3%減少した。

中銀のノル・シャムシア・ユヌス総裁は、鉱業や建設部門の活動が今後盛り返し、個人消費は底堅いとして第4・四半期には成長が回復すると予想した。

来年に利下げする可能性を問われると、それは金融政策委員会が常に監視していることだと回答。記者団に対し「われわれは進む方向を前もって決めてはいない。外部の動向とそれが成長・インフレ見通しにどのような影響を与えるかを引き続き分析していく。データを常に注視していく」と述べた。

マレーシア中銀は5月に利下げしている。

UOB銀行(クアラルンプール)のエコノミスト、ジュリア・ゴー氏は、米中の「第1段階」の貿易合意について、「一部制裁関税が6カ月以内に撤廃されれば、輸出の一定の回復の道を開く。しかし制裁関税の問題が先送りされれば、センチメントは改善しない」と述べて、マレーシア中銀が来年第1・四半期に利下げするとの見方を示した。

輸出は1.9%減。電気・電子製品、コモディティの需要が低迷し、第2・四半期(0.4%減)を上回る落ち込みとなった。

売上・サービス税再導入の影響が完全に表れ、内需も減速した。ただユヌス総裁は、内需はなおしっかりしており、中銀の長期平均予想(7%)に合致して正常化していると指摘。

「わが国は開放経済のため、国際情勢に無縁ではいられない。しかし、輸出品目が多様なことが、外部環境の向かい風をある程度弱めている」と述べた。

<減速傾向続く>

総裁は、第4・四半期もプラス成長が見込まれるとして、2019年の成長率目標を4.3─4.8%に据え置いた。マレーシア政府の成長率予想は4.7%。

しかしコンティヌーム・エコノミクスのエコノミスト、チャル・チャナナ氏は、広範囲に減速がみられることから、2019年上半期を上回ることはないと予想。

「貿易は依然、非常に不安定で鉱工業生産はかなり弱いデータが続いている。それらが一段と不振となれば、中銀は遅かれ早かれ追加利下げに踏み切るだろう」と述べた。

中銀は先週、流動性の供給に向けて3年ぶりとなる法定預金準備率(SRR)引き下げを実施。その数日前には政策金利を据え置いたばかりで、SRRの引き下げは予想外だった。[nL3N27O2O6]

総裁は、マレーシアがFTSEラッセルが持つ懸念への対応に取り組んでいると述べた。FTSEラッセルは9月、世界国債インデックス(WGBI)から除外する方向で見直していたマレーシア国債について、流動性面の是正措置を講じるための6カ月の猶予期間を設けた。[nL3N26I2HR]

総裁は、中銀の最近の措置により、オフショア投資家は国内でポジションをヘッジするための柔軟性が増していると指摘。外為取引量は増加し、取引コストは低下していると語った。

今後も指標提供会社と投資家が持つ懸念に対応し、市場の効率性向上に向けた措置を続ける、と表明した。

第3・四半期の通貨リンギ<MYR=>の対ドル下落率は1.1%。中銀は米中貿易戦争が長引く中、リスク回避の動きが拡大したことが背景だとした。

第3・四半期の経常収支は115億リンギ(27億8000万ドル)の黒字で、黒字額は第2・四半期の143億リンギから縮小した。

第3・四半期の総合インフレ率は1.3%。中銀は、2019年は「低い」水準にとどまり、2020年は控えめに上昇するとの見通しを示した。

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