【慎泰俊】貧困者向け融資が、貧困を減らさなかった理由

2019/11/18
途上国の貧しい人々に金融サービスを提供するマイクロファイナンス
マイクロファイナンス機関創設者のムハマド・ユヌス氏が2006年にノーベル平和賞を受賞したこともあり社会的意味合いの強いビジネスだと思われていた。
しかし、2019年にノーベル経済学賞を受賞した開発経済学者のエステル・デュフロ氏らは、インドでの社会実験でマイクロファイナンスでの融資に貧困削減効果が見られないことを2009年に明らかにしてしまった。
実験結果に反論するユヌス氏らと経済学者たちとの激しい論争が行われる中で、マイクロファイナンスは過去10年で大きく変わり、現在も変化が続いている。
マイクロファイナンスの現状と今後、ビジネスにおける社会的インパクトについてアジア4カ国でマイクロファイナンス事業を展開する五常・アンド・カンパニーの慎泰俊社長に話を聞いた。
プロフィール 慎泰俊(しん・てじゅん)1981年生まれ。五常・アンド・カンパニー代表取締役社長。朝鮮大学校、早稲田大学大学院ファイナンス研究科卒業。2006年にモルガン・スタンレー・キャピタル入社。その後、ユニゾン・キャピタルを経て、2014年にマイクロファイナンス事業を行う五常・アンド・カンパニーを創業。2007年に子ども支援やマイクロファイナンスファンドの企画を行うNPO法人Living in Peace を設立。(写真:呉太淳)

マイクロファイナンスは役立つのか

──今年ノーベル経済学賞を受賞したデュフロ氏らが2009年に発表した研究ではマイクロファイナンスによる貧困削減効果は見つかりませんでした。マイクロファイナンスは社会に役立っているのでしょうか。