[ウィーン 11日 ロイター] - 国際原子力機関(IAEA)は11日に発表した四半期報告書で、イランが中部フォルドゥの地下核施設でウラン濃縮活動を開始したと確認した上で、低濃縮ウラン貯蔵量が引き続き拡大したと明らかにした。

報告書は「2019年11月9日以降、イランはフォルドゥの施設でウラン濃縮を行っている」としている。報告書は加盟国に送付された。イランは前週、15年の核合意の履行停止第4弾として同施設で遠心分離機にウランガスを注入し、ウラン濃縮を再開すると発表していた。[nL3N27L57N]

イランは7月初旬以降、濃縮ウランの貯蔵量とウラン濃縮度に関しても、核合意で定められた上限を相次いで破っているほか、旧式の「IR1型」以外の遠心分離機でのウラン濃縮の禁止規定も違反している。

核合意の下で限定的なウラン濃縮活動が認められている中部ナタンズの施設では、合意違反である高性能の遠心分離機を稼働させている。

外交筋によると、イランの濃縮ウランの生産量も従来の1カ月当たり計70─80キログラムから約100キログラムに増えており、さらに加速しているという。「1カ月当たり100キロから大幅に増えると見込んでいる。150、170、あるいは200キロになるのかどうかは分からない」と述べた。

IAEAの報告書によると、低濃縮ウラン貯蔵量は372.3キロと、核合意の上限202.8キロを大幅に超過。濃縮度も4.5%と規定の3.67%を上回るが、イランが過去に達成した20%の水準には届いていない。核兵器への転用が可能なウランの濃縮度は90%以上とされる。イラン原子力庁(AEOI)は9日、イランにはウラン濃縮度を最大60%まで引き上げる能力があると表明した。

また、核合意で認められていない遠心分離機を数基導入したと確認。「IR8s型」、「IR9型」などが含まれているという。

ウラン濃縮活動を再開したとするイランの7日の発表を受け、フランス、英国、ドイツは11日に共同声明を発表、イラン核合意に盛り込まれた紛争解決メカニズムを検討する方針を明らかにした。これにより、イランの合意違反に対する国連による制裁が再び発動される可能性が高まっている。

仏英独の3カ国は、イランの行動は中東地域の緊張緩和に向けた3カ国の取り組みを妨害していると非難するとともに、イランのウラン濃縮活動の再開決定を非常に懸念していると表明した。

声明の中で、3カ国は「中東地域の緊張緩和のための条件を整え、それを後押しするため、引き続き外交努力をする用意がある」とする一方、「こうした取り組みは、最近のイランの行動により一段と困難になっている」と指摘した。ただ、直接制裁を促すことはしなかった。

さらに、10月にイランがIAEAの査察官を一時拘束したとされる問題を受けて、査察活動でIAEAに全面的に協力するようイランに求めた。

外交筋が先週ロイターに明らかにしたところによると、イランはIAEAの査察官を一時拘束し、出国に必要な書類を没収した。2015年にイランが欧米などと核合意を結んだ後、査察官の活動がこのような形で妨害を受けるのは初めてとみられる。

*内容を追加しました。