チーム全体のアウトプットや健全性は「新しいリーダーシップ」で生まれる
理想のチームを論じるとき、「自己管理型チーム(self-managing teams)」という考え方がある。しかし私はそれを「自己改善型チーム(self-improving teams)」と言い換えたい。自己改善型チームとは、チームの中でフィードバックを回すことができ、進化を目指して取り組んでいるチームのことだ。
自己改善型のチームの場合、失敗も適切に対処し、そこから学びを得る。また、物事を評価・推測することで、一部の課題だけではなく全貌を明らかにしていく。チームメンバー個人の能力と、チーム全体の能力を向上できる。
こんなに自走できてしまうと、リーダーによるマネジメントがもはや不要にも見えるが、そんなことはまったくない。むしろリーダーは、チームに可能性を与え、促進剤として働く役割を持っている。
これまでの「チームを管理しなければならない」という考え方から離れ、コーチングやコラボレーションの促進を実践するのだ。リーダーの行動は、チーム全体のアウトプットや健全性に最もよく表れ、価値をつくる助けになる。
リーダーの役職に就くような大半の人は、おそらくはその仕事に精通して、ある程度の能力を獲得してきたゆえだろう。それゆえ過去の成功体験はその人自身の個人的なパフォーマンスと密接に結びついている。コーチングという他者のパフォーマンスを最優先事項に据えることは、リーダーとしての経験が豊富であればあるほど、意識の変換は難しい。
しかし、強い「自走して改善できるチーム」には、新しいリーダースタイルが必要になるのだ。

自己改善型チームに必要なリーダー像とは

自己改善型チームには、何よりも「コーチ、そしてコラボレーターみたいなリーダー」が必要になる。優れたコーチがするような適切な問いかけをし、優秀なコラボレーターがするように喜んでチームに参加して積極的に決断をする必要がある。
誰かが先頭に立ったほうがチームのためになるときや、最適化を図って賛同を得るべきタイミング、進行ペースを落とすべき状況、チームの団結を深めることが必要な場面はいつなのか。たとえチームが自走できるとしても、リーダーが決めるべきことはたくさんある。
そして大切なのは、「コーチであり、コラボレーターであり、リーダー」というバランスだ。権威的ないわゆるリーダーが突然コーチとして振る舞っても、信頼は得られないだろう。一方で、コーチタイプのリーダーが突然意思決定を始めてマネジメントしようとしても、真剣に受け止めてもらえないかもしれない。
どんな人にも、得意なスタイルやその人なりのやり方があるが、それがすべての場面に当てはまるわけではないと知っておこう。3つの顔をバランスよく持ったリーダーシップ手法を使いこなし、さまざまな状況に即して臨機応変に対応できるようになることが大事だ。

動機づけとフィードバックが重要

では自己改善型チームをつくるために、一体何から考えるべきだろうか。
まずは、「自分たちのモチベーションとは何か」。そして、「フィードバックをどう回すか」だ。
どんな状況でも、モチベーションが行動となって返ってくる。そして、口だけのモチベーションではなく、信念として実行できるもの出なければ、周囲を裏切ってしまうことになる。
たとえばフィードバックを尊重すると言っておきながら反対意見を封じれば、人々の考えは聞こえてこないだろう。誠実さを示して改善を促すには、聞きたくないことも進んで耳を傾けなくてはならない。
自己改善型チームのマネージャーにとって何よりも欠かせない役割のひとつは、モチベーションの設定とチームのレベルアップとを結びつけることだ。

フィードバックをもらうことがモチベーションにも繋がる

また、人はフィードバックを得られた場合にのみ、着実に成長できるという点も忘れてはならない。従って、フィードバックループは、「簡潔で前向き」であるべきだ。
改善すべき点を提案するだけでなく、チームメンバーがすでに良好な成果を上げていることに対して、一貫してフィードバックと高い評価を与えること。これがモチベーションにも繋がる。
リーダーとしてのあなたの仕事は、健全で建設的なフィードバック・サイクルを作り上げ、それを機能させることだ。

全てのプロセスを凝縮することで、ヒントが見える

また、モチベーションとフィードバック・サイクルを設定するときには、「プロジェクトのプロセスを凝縮させる」という準備が効果的だ。
時間と、大量の付箋を使って、まずはメンバーそれぞれが、自分が考えるプロジェクトのプロセスとは何かを表現しあう。互いの見解を確認し、メンバーがプロジェクトのどの部分を最重要だと考え、検討が不十分だと思われる部分はどこか、理解しやすくなる。いわばフィードバックの下地となるのだ。
次に、全員のプロセスを凝縮させてまとめていく。それができたら、さらに「このプロセスのうち、どの部分を改善すれば、チームとして最大のメリットを得られるか」という質問を投げかける。
このエクササイズでリーダーは、意見を述べる立場ではなくファシリテーターという役割を担う。答えを持っているのはチームメンバーだ。リーダーにできる最大の仕事は、彼らに耳を傾け、この話し合いを進行させることなのだ。
私はどのチームにも同じ質問をするが、導き出される答えや決断に同じものがない。なぜなら、チームはそれぞれ異なっているし、メンバーも、プレッシャーも、抱えている問題も、それぞれ違うからだ。
けれども、どんなチームも「コーチであり、コラボレーターでもあるリーダー」の力を必要としている。彼らの進化を後押ししたい、という心構えをもつリーダーの力が必要なのだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Cate Huston、翻訳:ガリレオ、写真:runeer/iStock)
© 2019 Quartz Media, Inc.
This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.