【MB】スーツは「概念」が残り「形」が変わる

2019/11/2
今回のテーマは「スーツは死ぬのか?」と題して、ファッションバイヤーのMB氏、ミニマリストのしぶ氏、オーダーメイドスーツ専門店を経営する勝友美氏、アパレル業界に精通するコンサルタントの小島健輔氏をゲストに迎えて議論を交わした。
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番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、MB氏の「概念は残るけど形は変わる」に決定。
番組内ではMB氏の想像する「未来のフォーマル」像もファッションショー形式で披露された。
ファッションを「点」でとらえるのではなく「線」で捉えたとき、スーツは変わるべき転換期にある、と語るMB氏。その真意について、番組放送後にお話を伺った。
スーツはもともと「カジュアル」だった
今でこそスーツ姿はフォーマルな印象を受けるが、歴史を遡ると実は「カジュアル」なものであったとMB氏はいう。
MB 昔は、格式高いフォーマルな場で着るような服装は、燕尾服などジャケットの丈が長いコートのような形のものでした。
ただ、それを着た男性がスモーキングルームでタバコを吸おうとすると、座ったときにシワになってしまう。
ジャケットの着丈をもう少し短くした方が機能的なのではないか、ということで登場したのが「スモーキングジャケット」という、いまのスーツジャケットの原型になります。
これは普段着として登場したもので、ファーマルな場で着るのは失礼だとされていました。
もっと言うと、現代のスーツは上下揃っていることが一般的ですが、当時のフォーマルの価値観でいえば、上下は不揃いが常識です。
色や柄、素材が切り替わっていることこそがフォーマルだ、という価値観が根強くあった。
なので、上下揃ったスーツ(ラウンジスーツ)は、パジャマのような扱われ方をしていました。
でも、次第にもっとカジュアルな服がたくさん出てくるようになってきます。
極端な例をあげればTシャツやナイロンのジャケットなどですね。
そうすると、だんだんと上下揃ったラウンジスーツがフォーマルなものとして、価値観が切り替わっていったんです。
これが簡単なスーツにおける概念の変化の歴史であり、このような転換がこれからも当然起こるであろうと僕は考えています。
ファッションとはヤンキーである
スーツに限らず、このような価値観や形の変化はファッションの「ヤンキー精神」からくるものだとMB氏は語る。
MB 番組内で小島さんが「ヤンキー」という言葉を使っていましたが、まさにあれはファッションの性質を表すものです。
ファッションって、ヤンキー文化なんですよ。
現代のトレンドでいえば、スケーターのようなビックシルエットのファッションって流行っているけど、じゃあ次に何がくるかといったら、揺り戻しで細身のファッションがくるんです。
そして、かっちりした格好が流行ったら、次はストリートが流行る。
色物が流行ったら、次は無地が流行る。
昔ノームコアという形でどんどん無地ものが増えていきました。
しかし、今はみんなそれに飽きて、逆転して派手なものや明るい色のものが増えている。
もしくは、70年代に生まれたパンクファッション。あれはチェックの細いパンツをビリビリに破いて着ている。
なんでチェックのパンツを選んでいるかというと、あれは体制に対するアンチなんです。
彼らが選んでいるチェックはタータンチェックという、思い切りフォーマルでトラッドなチェック柄です。
それをあえてビリビリに破いてスキニーとして履いてしまう。
体制に反することを繰り返し、新しいものが生まれてきたのが、ファッションの長い歴史です。
そういうヤンキー的な役割がファッションには備わっているんです。
それは、スーツの変容にも通じるものがある。
今回のような議論が起きたのも、「みんなスーツ着て働いてるけど、そろそろ変えた方がいいんじゃないの」という体制に対するアンチ的な発想ですよね。
ヤンキー精神をもった一部の人たちによる「スーツって違うんじゃね?」という動き方で新しいトレンドを生み出そうとしているのが、今の時代です。
リラックスできるとか、着心地がいい、とかそういう機能面ももちろんあると思います。
ただ、どちらかというとヤンキー的な価値観による概念の変化という捉え方の方が正しいと思います。
変わらなければ「スーツ」は「和服」に
MB氏は、しかしその変化は長いスパンで見るべきだとも言う。
MB ファッションのトレンドは、ゆっくり変化していくものです。
たとえば今回僕が未来のフォーマル像として提示したようなTシャツとジーンズが、いきなり実現するかといったら、それは違います。
もう少し長いスパンで見ないといけない。
他人から見て理解できないと、オシャレには見えないんです。
いきなり奇抜なファッションをして街中に出ても、それが全く理解できなければ、オシャレには映らない。
みんなが理解できるくらいに、差別化をするのがファッションなんです。
それを「客観的な差別化」と僕は呼んでいます。
スーツも転換期ではありますが、いきなり営業職の人が「お前それは失礼だろ」とみんなに突っ込まれるような服装をすることはないでしょう。
でも、10年20年のスパンで見てみると、「失礼」の領域もずいぶんと変わってきていると思うんですよ。
いまってネクタイとかしなくても失礼じゃない場面の方が多いけど、20年前はネクタイしていないと当然のように叩き出されていた。
客観性が存在するから時間はかかるけど、線で見れば確かに変わっている、というのがトレンドだと思います。
それはスーツも全く同じです。トレンドは点で見ないで、線で見ないといけない。
20年という線で見たときに、スーツは明らかに変わっていて、それはこれからも同様に、明らかに変わっていくんだと思います。
MB氏は「スーツは変わるだろう」と予想すると同時に、「変わらなければならない」とも語る。
MB ファッションにおいて、変わることは必然です。変わるからファッションなんです。
「変化」はファッションの定義だと捉えていい。変わらなければ淘汰されていく。
もしスーツ業界がこれからもずっと、いまのスタイルを押し付けていこうとするなら、番組内でも小島さんがおっしゃっていましたが「和服」のような存在になっていくでしょう。
なぜ和服が現代においてここまで浸透していないのか。
それは変化をしなかったからです。
変化しないと淘汰されていくファッションの世界において、スーツは変わるべき転換期を迎えています。
だからスーツ業界は、形が変わることを前提にビジネスを組み立てないと、成立しなくなっていくでしょうね。
11月5日のテーマは「YouTube」
YouTuberという職業が広く認知され、早数年。
彼らの主戦場であるYouTubeには、日々、大量のコンテンツが投下され、動画プラットフォームとして、テレビを凌駕する勢いで成長し続けています。
ビデオリサーチの調査によりますと、2018年の時点で3人に2人がYouTubeを視聴しており、若年層のみならず、30〜40代の視聴層も増え続けています。
大人から子どもまでが楽しめるプラットフォームとしても成長し続けるYouTubeは、かつて栄華を極めたテレビ業界を飲み込むのでしょうか?
幻冬舎の箕輪厚介氏、就活YouTuberのしゅんダイアリー氏、放送作家の鈴木おさむ氏、コルク代表の佐渡島庸平氏を交え、徹底討論します。
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<執筆:富田七、編集:佐々木健吾、デザイン:斉藤我空>