(ブルームバーグ): みずほフィナンシャルグループが企業変革に向けた取り組みを拡大する。社員一人一人の多様性を生かす仕組み作りの一環として、転職や起業などによる離職者を人的資源として活用するネットワークづくりを進め、将来的には外部の世界で専門性を身につけた人材の再雇用も検討する。

ブルームバーグの取材によると、若手を中心に雇用の流動化が高まる中、みずほは離職者とのつながりである「アルムナイ」ネットワークの構築を目指す。優秀な若手人材がベンチャー企業やフィンテック企業に転職するケースも増えており、こうした離職者と交流を図ることで協業分野を模索したり、社員の主体性や挑戦意欲といった前向きな行動変化を促したりする狙い。

高経費率と低利益水準に悩んできたみずほにとって、同社が掲げる非金融も含めた新たな価値を生み出す次世代金融への体制作りは喫緊の課題だ。2018年4月に就任した坂井辰史社長が基礎的収益力の強化対策として真っ先に挙げたのは「企業文化の改革」。大胆に採用方針を変えると共に、変革に臨む組織作りも目指してきた。

腐ってる場合じゃない

昨年8月からは、社員同士が特定テーマの下に集まり議論するネットワーク作りを始め、社員の5%に当たる約3000人がテクノロジーや女性活躍などをテーマに国内外13グループで活動している。D&I推進室の犬塚麻由香室長は、こうした活動を通して社員が「腐ってる場合じゃない」と問題解決を模索する機運や、業務範囲を超えて互いのニーズを把握し、新たなアイデアを生むケースが増えてきていると語った。

11月を企業変革に向けた土台づくりの集中月間と位置付け、全社挙げての活動に乗り出す。技術や国際経済、介護など約20のテーマ別セッションを設け、社員に視野を広げてもらうと同時に社員間のコミュニケーションを促す。

UBPインベストメンツのファンドマネジャー、ズヘール・カーン氏は、日本企業は海外に比べ多様性の取り組みが遅れていると指摘。欧州では女性経営陣登用を初めとする多様性を重視した企業と、そうでない企業とでは10年間で株主資本利益率(ROE)に約3%の差が出たとの統計もあり、軽視すべきでないと述べた。

特に、労働人口が不足する日本では、多様性を受け入れることが優秀な人材確保にもつながり、企業の競争力に直結するとの見方も示した。

みずほの危機感

世界的な低金利環境下で金融機関が新ビジネスを創出するのは容易でなく、人事制度や内部改革を重点課題に挙げる金融機関は増えている。モーニングスターのアナリスト、マイケル・マクダッド氏は、みずほは3メガバンクの中で総資産利益率(ROA)が最も低く、組織としても合併後の統一感に欠けるとして、生き残りへの危機感が強い分、大胆な改革に踏み出しやすい環境にあると指摘する。

みずほは前期(19年3月期)に、システムや閉鎖予定の店舗といった減損などで7000億円近い損失を計上し、今期から始めた経営計画で構造改革を加速するとしてきた。従業員の削減や国内拠点の統廃合を前倒しで進める一方、関わりたい仕事にプロジェクト単位で参加できる公募制度を設けるなど人事戦略の改革も進めている。

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