幸福学で読み解く、「幸せな職場づくり」が必要な理由

2019/10/31
「働き方改革」という言葉があちこちで使われるようになったが、実際に職場が改善された実感が持てないという声も聞こえてくる。
そこで注目するのが「幸福度」だ。漠然とした概念である「幸せ」は、世界では「幸福学」として科学的に分析され、ビジネスに取り入れられている。
アメリカの研究では、「幸福度の高い従業員の創造性は3倍、生産性は31%、売上げは37%高い」というデータがあるくらいだ。「社員の幸せ」について、日本企業は何を取り違え、何につまずいているのか。また社員が幸せになると、成果や業績はどのように変化するのか。
NewsPicksアカデミアでは、「幸福学」の日本の第一人者・前野隆司慶大大学院教授と、離職率28%の「ブラック企業」から変化を遂げ、ユニークな働き方で注目を集めているサイボウズ社長、青野慶久氏の対談イベントを実現。そのレポートをお送りする。

「幸せ」だと、何がいいのか?

前野 慶應義塾大学で幸福学を研究している前野隆司です。もともとはエンジニアでロボットを作っていたんですが、ロボットより人間の心に興味をもち、工学者として宗教や哲学とは違うアプローチで「幸せとは何か」を研究しています。
いま「幸福学の第一人者」と紹介していただきましたが、幸福学は「well-being study」といって1980年代から世界中で何千人もが研究している分野です。ですから研究データもすでにけっこう蓄積されています。
そもそもなぜ、「幸せ」であることが大切なのでしょうか。
前野 隆司(まえの・たかし)/慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授
1962年生まれ。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等を経て、2008年より現職。2011年より同研究科委員長兼任。2017年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、ヒューマンロボットインタラクション、ハプティックインタフェース、認知心理学・脳科学、心の哲学・倫理学から、地域活性化、イノベーション教育学、創造学、幸福学まで。著書に、『幸せのメカニズムー実践・幸福学入門』(講談社現代新書)、『「幸福学」が明らかにした 幸せな人生を送る子どもの育て方』(ディスカバー21)など。