【大室正志】すでに「ドラえもん」の家族像はマイノリティ

2019/10/26
今回のテーマは、「結婚は時代遅れなのか?」。CRAZY WEDDING創業者の山川咲氏、「恋愛・恋活・婚活」事業に投資を行う、大木隆太郎氏、独身研究家の荒川和久氏、産業医の大室正志氏をゲストに迎えて議論を交わした。
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番組の最後に、古坂大魔王が最も優れていた発言として選ぶ「King of Comment」は、大室氏の「調整し続ける」に決定。
結婚や出産といった究極的な個人の選択を考える上で、個人と国の立場は別にして議論をすべき、という大室氏。
個人の立場で考えたとき、現代の結婚をめぐる問題、そしてメリット・デメリットはどこにあるのか。放送終了後にお話を伺った。
心が時代の変化に追いついていない
大室氏は、個人の結婚をめぐる問題は、現代の労働環境の問題に通じるものがあるという。
大室 まず労働環境の話をすると、今までは男性がフルコミットで正社員で働き、家事は妻に任せるということが当たり前だったわけです。
でも、今は非正規雇用も多いですし、昭和の形を残存させている会社は非常に少なくなっています。
加えて、右肩上がりで毎年賃金が上がっていくわけでもありません。
また、以前は終身雇用が当然で、ムラ社会のように同じ会社の人と長い時間かけてやっていく場所でしたから、あまり自己主張はしない方がいいとされていました。
ただ、転職が当然の時代において、今は流動性が激しい。
社内においても部署をまたいで連携しながら半年間で形にしなければならないようなプロジェクト型の業務が増えました。
さらに、女性や外国人、もしくは自分とは全く違う環境で働いてきた人たちをマネジメントする必要も出てきた中で、「背中を見て育て」は不可能になりました。
昔は阿吽の呼吸でやることができたけど、今は「説明」が重要な時代です。
終身雇用やムラ社会の時代ではうまくいっていた、「言わなくてもわかるだろ」が、今の労働環境だと、かなり厳しいものになっているんですね。
ただ、環境は明らかに言語化を要求しているのに、上司部下共に、今でも「言わなくとも分かって欲しい」から変化していない人が多い。
つまり、環境変化に心の変化がついていけていないんです。
実は結婚も同じで、すでに旦那さんは働きに出て、女性は郊外の一軒家で待つ、といったスタイルはもうほとんどありません。
でもいまだに昔一般的だった結婚スタイルがデフォルトだと思っている人が多く、婚活自体が、ないものを求める無理ゲーになりつつあります。
「ドラえもん」は時代劇として見るべき
たとえば、ディズニー映画などは現代の女性のあり方などに対して、昔話でもアジャストして変えてくるじゃないですか。
結婚して幸せに暮らしましたとさ、という結末にあえてさせなかったりする。
でも、日本ではいまだに、「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」、「サザエさん」、「ちびまるこちゃん」などが今も現役で、これら日本を代表する影響力のあるアニメ作品はどれも「お母さんが専業主婦」なんです。
それを雛形に育ってしまうと、あの形が正解なんだと思い込んでしまう。
自分は、この辺りのアニメは昭和や平成初期という近過去を知るための「時代劇」として観るべきだと思うんです。
現代劇として見てしまうと、あまりに実態と乖離していますし。
すでに「ドラえもん」や「ちびまるこちゃん」が見せてきた家族像はマイノリティになっているのに。
これだけ価値観が多様化した中で、ある程度一定のパイをもって売れるのは女性誌だと「VERY」ですからね。
バリキャリ女性で両立するというのもあるけど、ひとつの「人生のアガリ」のようなパターンとして商社マンが自由が丘や二子玉川にマンションを買って、奥さんはママ友とランチするみたいな夢はいまだに根強いですよね。
先ほどの労働環境と一緒で、環境が変わっているのに、まだ心のあり方がそこに追いついていないということなんです。
これが、今の僕らの結婚をとりまく現状じゃないかなと思っています。
現行の制度による格差は是正されるべき
番組内で10年後の結婚観がどうなっているか、という点も議論されたが、大室氏は個人の結婚観について自ら価値判断を下すことはできない、という。
大室 僕が今、確かに言えることは、先述の思い込みを解体するべきだ、ということだけです。
ただ、そこから先のあり方については、僕は正直わかりません。
たとえばフランスやスウェーデンのように、婚外子や事実婚を認めて、恋愛感情がなくなったらすぐに契約を解消する。
そういった恋愛をベースにした考え方で日本は進んでいくのか、その一方で、恋愛に特権的な価値を与えずに、ひとりで生きたっていいじゃない、という道でいくのか。
「おひとりさま」を積極的に肯定するのは世界的にみても珍しいあり方ですが、そこはテクノロジーが解決してくれるよと、そういう社会があってもいいじゃないか、という考え方もあります。
その場合は、国力を維持するために移民や養子縁組など他の対策を考える必要が出てくるかもしれません。ただ、いずれにせよ全て欧米の真似をする必要はないです。
また、結婚については個人と国と立場を分けて考えるべきだと大室氏は語るが、現代において個人が結婚するメリット・デメリットについてはどう考えているか。
大室 個人の立場でいうと、昔は結婚しないデメリットが大きかったんですよ。
一人前として認めてもらえないとか、独身独り者に対して社会が厳しかった。
ただ、今はそこまで厳しくないですよね。
ひとりで生きていくための状況が整っているので、デメリットが減っていることは確かだと思います。
経済的なメリットは、昔であれば多くの場合は女性が養ってもらうことが多かったけど、いまは女性でも稼ぎがある人は多いので、一部ではそこもメリットじゃなくなってきている。
最後に残るメリットとしては、今の日本の現行の制度でいえば、子どもを産みやすい、育てやすい、ということ。
というか、正直ここくらいに尽きるんですよね。
もともとは「経済的なメリット」と「親密性」そのふたつが合わさったものが結婚と言われていました。
ただ、現代は人によって結婚に求めているものも多様になってきています。
特に子どもを産む必要がない場合だと、社会的に認められるという点に多くのメリットを感じるのはむしろ、同性婚の方ですね。
一方で、必ずしも同性婚をしたい人ばかりでもありません。
今ある結婚の制度に同性愛者の方を寄せていこうという考え方じゃなくて、そもそも結婚なんて制度はフィクションなのだから、異性愛者の人たちが作った制度に乗っかる必要はないよ、という人もいます。
これは労働でいうと、正規雇用と非正規雇用があったときに、みんなを正社員にしていこう、という共産的な考え方と、そもそも全員自由で全員フリーランスだあるべきだという考え方で分かれたりすることと似ています。
ただ、結婚もあくまで契約です。
どちらに転ぶかはわからないですけど、現時点で結婚制度によって生きづらさを感じている方が増えているのであれば、それは現代風にチューニングされていくべきだとは思います。
10月29日は「スーツは死ぬのか?」
クールビズが浸透し、多様な働き方が認められつつある昨今、社会人=スーツの図式が崩れ始めています。
総務省の2016年家計調査によりますと、1世帯当たりの背広服への年間支出額は、2000年のおよそ半分に減少。
紳士服メーカー大手の決算も振るわず、スーツ需要の低下は、明白な数字として現れています。
果たして、スーツはこのまま消えゆくものなのでしょうか?未来のビジネスファッションとは何なのでしょうか?
ファッションバイヤーのMB氏、アパレル業界に精通する小島健輔氏勝友美氏、ミニマリストのしぶ氏を交え、徹底討論します。
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<執筆:富田七、編集:佐々木健吾、デザイン:斉藤我空>