[ニューヨーク 23日 ロイター] - 米国の失業率が約50年ぶり低水準で推移し、人件費が上昇するなか、国内企業は健全な利益率を確保するために自動化に積極的に取り組んでいる。ロイターの企業収益分析で明らかになった。

こうした取り組みは、単に工場に産業ロボットを多く導入するということにとどまらない。むしろ企業は、人事管理から処方箋調剤に至るまで、様々な業務をこなすことができるソフトウエアや機械に投資することで、低コストの労働力不足に対処しようとしている。

例えばシティグループ<C.N>は、これまで人手を要してきた日常業務を行うクラウドシステムの拡充を進めている。医療保険会社のユナイテッドヘルス<UNH.N>も、自動化への取り組み強化で、来年は10億ドルのコスト削減が見込めると投資家に説明した。コロナビールのブランドで知られるアルコール飲料大手コンステレーション・ブランズ<STZ.N>は、自動化への投資でボトルの梱包作業の効率が高まり、コストが削減されると説明している。

米失業率が歴史的な低水準となるなか、企業のこうした取り組みにより賃金の伸びは抑制されている。10月の失業率は3.7%から3.5%に改善したが、平均時給は横ばいだった。賃金上昇率は前年比2.9%に小幅低下した。

クレディ・スイス・セキュリティーズの米国株ストラテジスト、ジョナサン・ゴラブ氏は、自動化への設備投資で生産性が向上したため「賃金からのマージン圧力を全く心配していない」と述べた。

リフィニティブのデータによると、四半期決算発表の際に企業が自動化について説明した回数は年初から1110回を超えており、前年同期から15%増加し、2016年の10月からは倍近く増えた。

先進自動化の業界団体(Association for Advancing Automation)によると、今年上期の企業からの受注はロボットだけで前年同期比7.2%増加し8億6900万ドルに達した。

ファンドマネジャーやアナリストは、企業の自動化への投資が予想以上に好調な収益の背景にあると指摘する。リフィニティブのデータによると、第3・四半期決算を既に発表したS&P500種採用企業のうち、利益が予想を上回った企業は全体の約83%で、1994年以降の平均65%を上回っている。

ジェームズ・インベストメント・リサーチのポートフォリオ・マネジャー、マット・ワトソン氏は、「バランスシートをみただけでは分かりにくい方法で企業は利益を得ている。これらの投資全てが利益率を維持する上で役立ち始めている」と説明した。

ワトソン氏は、自動化の活用で恩恵を受けている企業に投資している。自動化を提供する企業よりもずっと魅力的なバリュエーションであることが理由だという。

同氏によると、米物流大手フェデックス<FDX.N>は、配送設備の自動化に投資すると共に、配送も部分的に担うロボットをテストしている。効率性を高めるために顧客との関係を担う面で自動化を進めるブローカーのLPLファイナンシャル・ホールディングス<LPLA.O>株にも投資している。

ロボ・グローバル・ロボティックス・アンド・オートメーションETF<ROBO.P>を運用するロボ・グローバルの調査部門代表、ジェレミー・キャプロン氏は、物流とヘルスケア部門で最も自動化が進んでいると指摘。コスト低下と次世代小型システムの導入で、これらの部門の売上高は増加を続けると見込んでいる。同社のETFは年初から20%近く上昇し、S&P500指数のパフォーマンスとほぼ一致している。

キャプロン氏は、「自動化ソフトは非常に使いやすくなっており、もはや導入のために優れた技術力は必要ない」と指摘。「大手多国籍企業で自動化が進んでいるだけでなく、中小規模の企業でも自動化の技術が活用できるようになっている」と説明した。