実は「暴走老人による死亡事故」は激減していた
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注目のコメント
データの引用が適切な記事だとは思えません。
高齢事故の件数が増えているのは高齢者ドライバーの数が増えているから、はイエス。
過去十年間で高齢者ドライバーの免許人口当たりの事故率は減っている、もイエス。
ただし、この二点は「高齢者ドライバーの事故リスクは高くない」事を意味していません。特にペーパードライバー率や運転時間を考慮していません。
「運転能力を過信して免許を返上せず深刻な事故を引き起こす高齢者の身勝手」が問題としているのは高齢者ドライバーの運転能力であり、それを事故率から読み取るならば「実際に運転している高齢者ドライバー人数あたりの事故率」や「運転時間あたりの事故率」であるべきでしょう。
私も以前にこの点を調べようとしたのですが年齢別のペーパードライバー率や運転時間といった基本的な統計が見つかりません。ただ参考になるのは次の損害保険料率算出機構による解説で、年齢別の保険実績で70歳以降は確かにリスクが上昇しています。
自動車保険の概況2018 - 交通事故にみる高齢者運転者の実態 (76ページ)
https://www.giroj.or.jp/publication/outline_j/j_2018.pdf
この点と、記事でも指摘されている高齢者ドライバー数の増加を考えるのであれば、免許返納やサポカー等の義務化と言った議論の方向は間違っていないと思います。
記事の後半は別記事の方がよいと思います。この分析では、男女合計したものになっていますが、日本で高齢ドライバーの総数が増えているのは、高齢化の影響もありますが、女性の免許取得率の上昇がかなり大きいです。
例えば、平成27年末の統計では、
男性免許取得率
75〜79歳 71,2%
70〜74歳 82.2%
65〜79歳 92.6%
60〜64歳 92.1%
女性免許取得率
75〜79歳 22,8%
70〜74歳 41.6%
65〜79歳 64.8%
60〜64歳 73.8%
https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h30kou_haku/zenbun/genkyo/h1/h1b1s2_3.html
とかなり違います。さらに、女性免許取得率は、50代で8割以上、40代以下で9割を超えているので、今後の高齢者ドライバの増分のかなりの部分は女性高齢者ということになると思います。
手元に、女性高齢者ドライバーと男性高齢者ドライバーの死亡事故発生比率の違い(ドライバー数と走行距離・時間等のエクスポージャーを加味した比較が必要なので分析は結構難しい)のデータがないので、想像の範囲ですが、女性高齢者の方が比較的事故率が小さいとすれば、高齢ドライバーの女性比率の上昇によって、高齢者全体の事故率が低下するという可能性はありそうです。
https://www.pref.ibaraki.jp/kenkei/a02_traffic/archives/white_paper/pdf/h25/t_wp_29.pdf
とはいえ、高齢者全体が「身勝手か否か」を判断しようとする事自体ナンセンスな気がしますね。
NPでの「さよなら、おっさん」特集や、「上級国民問題」など、とかく社会から敵視されがちな高齢男性が、注目されやすいという悲哀なのかなという気はします。