柔軟性や自律性を重んじる人材

「ギグエコノミーは、現代の労働を一変させる」と思われた時代があった。フリーランサーたちは自律性を求め、柔軟性を楽しみ、伝統的な働き方を変化させた。企業は、安価な労働力を活用し、人を雇う際により賢い選択ができた。それは、互いに利益のあるシナリオのように見えていた。
しかし最近、ギグエコノミーは拡大しておらず、実際には縮小していると示唆する研究論文が発表された。読んだ人の立場によって、この論文は批判されたり、反論されたり、支持されたりしている。
ただ、1つだけ断言できることがあるとすればそれは、フリーランスという働き方は一時ほどの輝きを失ったということだ。
理由はいくつかある。まずは、医療費が上昇し、雇用主の医療保険なしで働くことが魅力的でなくなっていること。次に、労働市場が厳しくなってきているため、企業は福利厚生を充実させることで、最高の人材を獲得しようとしていること。そのため、フルタイムで働くという選択肢を無視することが難しくなっていることだ。
あなたが雇用主側であれば、ギグエコノミーで生計を立ててきた有能なフリーランサーを雇うことに関心があるかもしれない。他社に負けない給与を提示するのは当然としても、柔軟性や自律性を重んじる引く手あまたのフリーランサーを惹きつけるには、何が必要なのだろうか。
以下では、重要な役割を担ってもらうために、フリーランサーにアピールできる方法をまとめてみた。

1. 医療分野の福利厚生を充実させる

米議会予算局(CBO)は、医療費負担適正化法(ACA)によって設立された医療保険取引所における個人の医療保険料が毎年10%上昇すると分析している。
フリーランサーは、この取引所を使って医療保険に加入することは義務づけられていないが、取引所の外で提供されている短期プランのほとんどには基本的な医療給付がない。そのため、緊急時には驚くほど高額な医療費を支払うことになりうる。
したがって、企業でフルタイムで働くことにフリーランサーが見出す大きな利益のひとつは、雇用主が提供する医療保険に加入できることだ。もしレベルの高いフリーランサーを必要としているのあれば、医療保険に関して出し惜しみしないのはもちろん、歯科や眼科のプランを加えることも検討するのがいい。
人材の共同雇用やアウトソーシングを請け負う組織(PEO)などと連携し、成長拡大するチームの福利厚生業務を担当してもらうことも可能だ。

2. スケジュール管理の権限を与える

フリーランサーにとって、柔軟性があるのは当然のことだ。そのため、自律性が制限された職場になじむことができない者も出てくるだろう。
幸いなことに、柔軟な勤務形態を提供することは現在、新たな潮流として勢いを増している。柔軟な勤務形態で働く従業員は、生産性の向上を実感できるというデータが出ているので、それも当然のことだ。柔軟な勤務形態には、働く時間、働く場所、休憩時間が含まれる。
ゼネフィッツ(Zenefits)の調査によると、回答者の大多数が、生産性と満足感が上昇したと報告しているという。また、将来的に転職を考える際も、柔軟な勤務形態があるかどうかは重要だと述べている。
企業は、従業員がいつどこで働くかといったことよりも、仕事がきちんと遂行されるかどうかにもっと関心を持つべきなのだ。

3. 学習手当を用意する

もしフリーランサーに欠けているものがあるとしたら、それは中核となるスキル以外を磨いていないことだ。特定の分野やスキルのエリートになって高い報酬を得るため、フリーランサーは関連領域が未開発のままであることがある。
新しい従業員が学び続けられるように、学習手当を支給しよう。たとえ年間1000ドルといった金額でも、講習を受けたり、セミナーや会議に参加したり、必要な書籍を購入したりできる。新しい従業員はこうした手当を喜び、現時点での能力だけを評価されているわけではないと実感するはずだ。
フリーランサーを迎えたら、プロフェッショナルとして扱い、さらに重要な役割を担う人材として成長することを祈ろう。そして、できれば会社から去ってしまわないように願おう。

4. 紹介ボーナスを支給する

臨時収入が嫌いな人はいない。とくにフリーランサーにとっては、リファラル採用が成功した際に支払われるボーナスは魅力的だ。理由はいくつかある。
まず、紹介ボーナスは最高の人材を見つけ、本気でチームを成長させたいという意気込みの表れだ。紹介ボーナスは投資利益率(ROI)が最も高く、より多くの利益をもたらし、離職率を下げると示唆する研究結果もある。
次に、フリーランサーは関連分野にフリーランサーの友人がたくさんいる可能性が高く、そうした友人を有望な候補者として紹介できる。適任の仲間を紹介すれば、臨時収入を得られることがわかれば、それまで歩んできた古いキャリアパスを捨てることへの大きな後押しになるだろう。
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スタートアップのような小規模企業の雇用主が適任者を雇うには、まず最高の候補者を見つけることから始まる。そうした最高の候補者は、フリーランサーといった伝統的ではない経歴を持つ人物かもしれない。
ここで紹介してきたような特典を提供することで、あなたの会社は魅力的な場所になり、フリーランサーのエリートがフルタイムで働く理由になるはずだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jared Hecht/Co-founder and CEO、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:Fundera/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with HP.