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海外でも売れる1本5000円のレンコン、誕生秘話
2019/10/18
泥畑のなかを走る男
「正直に言って、こんなに面白いもんだとも思わなかったですね」
現在、日本大学文理学部で非常勤講師を務める民俗学者の野口憲一は、そう振り返った。彼が想像を超えるほど「面白い」と言っているのは、学問のことではなく、レンコン。
教壇に立つ傍ら、大正時代から続く実家のレンコン農家「野口農園」で取締役を務めている野口は、1本5000円という日本一高価なレンコンを生み出した仕掛け人でもある。
2014年に売り出したこのレンコン、今では日本はもちろん、アメリカやフランス、ドイツの高級レストランでも採用されている。国内でも引く手あまたで、今年度、同農園は売り上げ1億円を突破する見込みだ。
異端の民俗学者は、なにを考え、なにを実行したのか? 野口農園がある茨城県のかすみがうら市に向かった。
土浦駅から車で10分ほど東に進むと、大きな湖が目に入る。琵琶湖に次いで日本で2番目に大きな湖は、日本最大のレンコン産地として知られる。
霞ケ浦の湖畔に点在する野口農園のレンコン畑は、計13ヘクタール。そのうちのひとつを訪ねると、3人のスタッフがレンコンの収穫中だった。水深50~80センチほどある畑の泥のなかに実をつけるレンコンの収穫作業は、過酷だ。
収穫期は、7月から3月ごろ。真夏も、真冬もゴムの作業着を身に着け、ジェットポンプの高圧水で泥を避けながら、レンコンをひとつひとつ手探りで見つけていく。
筋肉でパンパンに張っている野口の足は、泥のなかを歩き慣れた証し。小学生の頃から収穫を手伝ってきた野口は、「僕は膝まで泥がある畑のなかを走れるんですよ」と笑う。
1本1万円でレンコンを売りなさい
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