[ワシントン 10日 ロイター] - 10日にワシントンで始まった米中の閣僚級通商交渉は、1日目の協議を終えた。トランプ米大統領は、極めて良好な交渉だったと述べたほか、中国の劉鶴副首相と11日にホワイトハウスで会談することを明らかにした。

ホワイトハウスによると、トランプ氏と劉副首相は米東部時間11日午後2時45分(日本時間12日午前3時45分)に会談する。

米経済団体幹部らは、米国が来週予定されている関税引き上げを見送る可能性に期待を示した。

双方の閣僚による直接協議は7月下旬以来。ムニューシン米財務長官とライトハイザー通商代表部(USTR)代表は、劉氏ら中国当局者とUSTRで約7時間にわたり協議を行った。

トランプ大統領は協議終了後、記者団に対し「非常に良い交渉だった」と述べ、11日にホワイトハウスで劉氏と会談する意向をあらためて示した。会談についてはこれより先にツイッターで言及していた。

ホワイトハウス当局者も1日目の協議は極めて順調に進んだとの見方を示し、「おそらく想定よりも良かった」と述べた。

劉氏は笑顔で記者団に手を振ってUSTRを後にしたが、質問には応じなかった。協議は11日まで行われる。

米中双方から説明を受けた全米商工会議所のマイロン・ブリリアント副会頭(国際部門責任者)は、通貨や著作権保護などの面で初期の合意が得られる可能性があるとの見方を示した。

同氏は記者団に対し、交渉団は市場アクセスや知的財産権保護などの問題を巡り「一段と大きな合意を模索している」とし、「今週の協議で通貨を巡る合意が得られる可能性もある。これにより10月15日付で米政府が関税措置第4弾を発動させない可能性がある」と述べた。

トランプ大統領は10日、比較的小規模の合意を受け入れる用意があるかとの記者団の質問に答えず立ち去った。これまでには、部分的な合意より包括的な合意を望む考えを示している。

<中国は「強い誠意」>

米国は協議再開を控えた今週、中国政府によるウイグル族などイスラム系少数民族への弾圧への関与を理由に、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)<002415.SZ>や公安機関など28団体・企業を事実上の禁輸リストに追加したほか、中国当局者に対するビザ発給制限を発表した。

これに対抗し、中国も反体制派と関係がある米国人へのビザ発給規制を厳格化することを計画しているという。

こうした動きを受け、協議に向けてムードが悪化したが、中国国営メディアは中国側が一段の対立激化を回避するため交渉に応じる構えを示していると報じた。

国営新華社によると、劉副首相は通商協議で双方が重要とみなす問題について合意を目指す考えを示し、「中国は強い誠意を持って交渉に臨む。貿易収支、市場アクセス、投資家保護などの面で米国と協力していきたい」と述べた。

米農務省が10日公表した統計によると、通商協議を前に中国が米国からの大豆と豚肉の輸入を急拡大させたことが分かった。民間輸出業者の中国への大豆販売は39万8000トン。1日の販売量が急増したのは今週に入ってから2日目となる。

<核となる問題は先送りか>

米中は、知的財産権の保護や強制的な技術移転の停止、補助金の削減、市場アクセスの拡大などを求める米国側の要求を巡って対立している。

今回の協議では最も溝の深い問題は取り上げられない見通しで、今後の協議に先送りされる可能性が高い。

全米商工会議所のブリリアント氏は、知的財産権を巡り話し合われたのは主に著作権や商標権の侵害など「20世紀の知的財産権保護」で、データフローやコンピューターのソースコード、商業データなどの保護に関するものではなかったと明かした。

このほか、米中ビジネス評議会のクレイグ・アレン会長は通貨を巡る合意について、米中が2月におおむね合意したものを踏襲する公算が大きいと指摘。貿易を有利にするための為替操作は行わないとする主要20カ国・地域(G20)会議での確約に類するものになるとの見方を示した。その上で、通貨を巡り合意すれば「前向きだ。米国が合意しやすくなる」と語った。