【再掲】リチウムイオン電池の父が語る「奇跡の発明」の裏側

2019/10/9
ついに、この時がやってきた。
2019年10月9日、ノーベル化学賞が発表され「リチウムイオン電池」を発明した旭化成の吉野彰名誉フェローが受賞した。
1985年に発明されたリチウムイオン電池は、今やスマートフォン、ノートパソコン、デジタルカメラなどさまざまな電子機器に使用され、数々のイノベーションを“黒子”として支えている。
そして、リチウムイオン電池は今、電気自動車(EV)の動力源として世界のモビリティ業界でも革新を起こそうとしている。
吉野氏はいかにしてリチウムイオン電池を発明したのか。稀代の化学者は、電動化する自動車の未来をどう見通しているのか。
NewsPicksはこれまで複数回にわたってインタビューし、吉野氏の頭の中をひも解いてきた。貴重なインタビューを、ノーベル化学賞の受賞を記念して再掲しお届けする。
10年後の世界を想像しながら、読み進めてみて欲しい。

まさか「自動車」に使われるとは

──吉野さんは、リチウムイオン電池の発明者として世界的に知られています。
リチウムイオン電池の原型が完成したのは1985年のこと。当時は、今のIT社会なんて誰も想像していませんでした。
私がターゲットにしていたのは、ソニーが開発していた8ミリビデオカメラでした。その頃のソニーは、「ビデオ戦争」といわれる家庭用ビデオレコーダーの規格争いに敗れ、起死回生のためにビデオカメラを開発していたんです。