(ブルームバーグ): SBIホールディングスは地方創生支援の一環として、厳しい経営環境にあえぐ地方銀行への投資を強化する。すでに打診を受けた10行以上について出資検討に着手した。1行当たり最大1000億円超の資金を投じることも排除しないという。また、それとは別に不適切融資で経営再建中のスルガ銀行への出資も検討することを明らかにした。

北尾吉孝社長がブルームバーグとのインタビューで述べた。SBIは9月、地銀支援の第1弾として島根銀行に25億円を出資すると発表。北尾社長によると、こうした動きを受けてすでに10行以上から出資を求める打診があったという。現在、資本提携の可否を判断するための審査を順次進めている。

SBIは約3年前から傘下のSBI証券による共同店舗運営などの業務提携を通じた地域金融機関との関係強化を進めてきた。北尾社長は「信頼関係を醸成するのに3年かかった。地方再生、地方産業の活性化を掲げて、できることをやっていきたい」と述べた。

出資の判断基準は経済合理性があるかどうかだと説明。単に株価が安いからではなく、SBIとのシナジーで「再生できるかどうかがポイントだ」と指摘した。例えば、地銀が多くの遊休不動産を抱えていることに着目し、不動産関連の子会社設立も検討している。この新会社を使えば、経営を改善できる対象行が広がるとみる。

個別の出資額に関しては「100億円、200億円単位の話は別に大きな話ではない」とし、過去の海外買収を例に挙げ、1000億円超の投資についても「いけるとなったら十分あり得る」と述べた。出資比率は「先方の意向に沿った比率が基本」として、少額出資から完全子会社化まで幅広く交渉に応じる姿勢を示した。

投資回収については、そもそも現在の地銀の株価が非常に割安だとの認識を示し、「PBR(株価純資産倍率)がこんなに低い状況。金利環境の変化で一気に変わるかもしれない」と指摘。仮に変わらなかったとしても、システム構築や有価証券運用、海外進出を支援することで、企業価値を上げていく考えを示した。投資期間は未定で、地銀側の意向によって株式の買い増しや売却も選択肢だという。

長引く低金利で経営環境改善の見通しが立たないことなどから、銀行、とりわけ地銀に対する市場の評価は低い。株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを示す指標であるPBRの東証1部銀行株指数は7日終値で0.41倍と解散価値の1倍を大きく下回る。栃木銀行の0.12倍をはじめ0.2倍を下回る銀行は11行で、全て地域金融機関だった。

スルガ銀から出資要請も

また、北尾社長は、今回の枠組みとは別にスルガ銀から出資要請が来ていることも明かした。投資用不動産への不適切融資で経営難に陥った同行のケースは「また別の判断が必要だ」と述べ、預金流出による影響や不良債権処理の状況などを精査し、出資に値する経済合理性があるかどうかを判断するとした。

SBIは新たに設立する持ち株会社を通じて、幾つかの地域金融機関に出資し、システム開発や資金洗浄対策などの共有で効率化する「第4のメガバンク構想」を公言している。持ち株会社への資本参加についてメガバンクや大手地銀、ベンチャー企業や海外投資家などから問い合わせが来ているというが、先行して地銀への出資話が出ており、持ち株会社の設立は見込みより「少し遅れる」との認識を示した。

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