[ロンドン/ニューヨーク 30日 ロイター] - リフィニティブのデータによると、第3・四半期の世界の合併・買収(M&A)総額は、前年比16%減の7290億ドルと、四半期ベースでは2016年以降で最低となった。

資金調達コストは依然として割安なものの、米中貿易戦争で景気の不透明感が強まり、企業のリスク選好度が低下した。

ゴールドマン・サックス・グループ<GS.N>のM&A担当共同グローバルヘッド、マイケル・カー氏は「市場などでリスクが高まっているとの懸念があり、M&A総額が減少した」と指摘した。

地域別では、米国のM&A総額が前年比40%急減し、2460億ドル。2014年以降で最低となった。米国では、貿易摩擦を背景に第3・四半期に個人消費が伸び悩み、設備投資も低迷した。

アジアのM&A総額も、前年比20%減の1600億ドルで、2017年以降で最低。アジアでは香港で民主化デモが相次ぎ、金融ハブとしての将来に懸念が浮上した。

金融関係者によると、金額を巡って売り手と買い手が折り合えないケースも多かったという。

クレデイ・スイス・グループのM&A担当共同グローバルヘッド、ロブン・ランキン氏は「M&Aを検討する企業のリスク回避姿勢が強まった。今年のM&A総額は減少する公算が大きい。ただ、来年にかけてはM&Aが力強く拡大すると予想している」と述べた。

地域別で第3・四半期のM&A総額が増加したのは欧州のみ。前年比で45%以上増加し、2490億ドルとなった。

バンク・オブ・アメリカのM&A担当EMEA共同ヘッド、エイモン・ブラバゾン氏は「欧州では様々な業種・地域で広範かつ多彩なM&Aが行われた」とし「特定の分野に依存しない健全な市場といえる。予見可能な将来、M&A市場が下向くと予想する明確な根拠はない」と述べた。

欧州最大のM&A市場は引き続き英国。欧州連合(EU)離脱を巡る不透明感でポンドが下落し、英国企業の割安感が高まった。

英国の今年のM&A総額は1770億ドル。グローバル市場でのシェアは6.4%。

英国のパブ運営会社グリーン・キング<GNK.L>が、香港の富豪、李嘉誠氏が設立したCKアセット<1113.HK>に買収されたほか、ろう人形館マダム・タッソーやレゴランドのテーマパークを運営するマーリン・エンターテイメンツ<MERL.L>もプライベートエクイティ(PE)のブラックストーン・グループ<BX.N>などに身売りすることで合意した。

第3・四半期の大型M&A案件では、香港取引所(HKEX)<0388.HK>が390億ドルでロンドン証券取引所(LSE)<LSE.L>の買収を提案。LSEは買収提案を拒否している。

米たばこ大手フィリップ・モリス・インターナショナル<PM.N>と同業アルトリア・グループ<MO.N>も合併協議を進めていたが、先週、合併を撤回した。実現していれば、時価総額2000億ドルを超える新会社が誕生していた。